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今年度から高等学校において必修となった「総合的な探究の時間」。
「探究型入試」を採用する大学も増えていることからも、進路やキャリアにも影響しうるこの探究的な学びへの注目度の高まりを実感することができます。
本記事では、惜しくも1次審査の通過は逃してしまったけれども、トモノカイの〈自由すぎる研究グランプリ運営事務局〉が推した作品に着目してみました。
本当に自由すぎるテーマが集まっており、一度に記事で紹介することが難しいので、いくつかのカテゴリーに分けたシリーズ記事としてご紹介します。
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目次
- 今回のカテゴリー:環境にイイね!地球のためにできることを考えるシリーズ
- ① 落ち葉の堆肥化で『もったいない』を減らすプロジェクト
- ② メタンガス排出量を減少させる効果のある紅藻カギケノリによる地球温暖化対策の促進
- ③ ネギボウズで海を救おう!!!~ネギボウズによる海洋汚染物質の除去~
- ④ 「い草の髄」の重油吸収剤
今回のカテゴリー:環境にイイね!地球のためにできることを考えるシリーズ
今回紹介する研究作品は、どれも環境に関する問題に着目し、その解決策を新しい発想から提案しているものです。今、私たちが地球のためにできることを考えるきっかけにもなるような作品が、集まっています。
※ハッシュタグは、応募時に参加者が任意でつけてくれたもので、画像は、提出された作品の表紙です。
① 落ち葉の堆肥化で『もったいない』を減らすプロジェクト
#繋がる力は百万馬力
どんな内容?
地域で廃棄されている落ち葉を回収し、コンポストで堆肥化する活動です。はじまりは、地域活動の一環で神社の清掃活動をしている時に、多くの落ち葉がただ燃やされて廃棄されていることに感じた「もったいない」という気持ちから。
サステナビリティとパートナーシップをミッションに、7ヶ月間に渡り、定期的に廃棄されている落ち葉と麦芽粕をコンポストに入れてかき混ぜ、堆肥化を実現しました。ほか、重要なポイントとして、各団体と連携した計画実現&拡散の活動があります。神社への落ち葉の提供依頼や、ビール工場への麦芽粕の提供依頼に始まり、大学との情報交流を行うなど、継続的な環境循環の仕組みを構築するデザイン力が秀逸です。
ここが事務局の推し!
- 学校、神社、企業、大学を巻き込んだスキームの構成力と、各団体との連携を実現する行動力。
- 通常、落ち葉の堆肥化で利用するのは有料の米ぬかだが、低コスト化に留意し、発酵が早く無償で提供いただけた麦芽粕を利用するなど、「もっと良くしよう!」という向上心と柔軟性。
- 地域活動から落ち葉に目を付けたのも視点も鋭いが、一過性の活動ではなく、サステナビリティを意識し、後輩に引き継いで継続性を持たせようとしているところ。
今後に期待したいポイント!
- 今後、文化祭で堆肥を利用した無農薬野菜を販売する計画など、単なる資源の再利用と堆肥化のみに留まらず、人が喜ぶ現実的なサービスに活用していく意識が素晴らしい。
- 企業や団体が魅力を感じる普遍性のある取り組みなので、各都道府県の高校と連携して全国に広げていければ、日本の環境を変えるほどのアクションプランになるかも!
② メタンガス排出量を減少させる効果のある紅藻カギケノリによる地球温暖化対策の促進
#世界を変える海藻 #かわいい海藻で地球温暖化を救う
どんな内容?
地球温暖化の主な原因の一つであるメタンガスの温室効果はCO2の約20倍とも言われています。紅藻類の一種であるカギケノリに含まれるビタミンB12が、牛の腸内のメタン生成菌に作用してメタンガス排出量を削減することに着目し、人工的にカギケノリを培養する実験を行いました。
カギケノリの培養における最適条件を導くために、計3回にわたり光質・光量などが異なる条件下で実験を行い、表面積の成長の推移を比べました。結果、実験室内で最も成長促進する環境条件を導き出し、人の手による継続的な種苗生産への道筋を切り開くことができたのです。
ここが事務局の推し!
- カギケノリを「人工的に」培養し、メタンガス排出量削減に利用するという、自分たちの手で環境問題に取り組むチャレンジ精神。
- カギケノリ培養にあたり、様々な条件下で実験を行い、論理的にベストプラクティスを導き出した緻密さに感服する。
今後に期待したいポイント!
- 将来的には、実際に培養をしたカギケノリを牛に与えて、具体的にメタンガスをどの程度削減できるか研究をしたいとのことで、実現した時の結果が楽しみ。
- カギケノリに目を付けたのは素晴らしいが、例えばカギケノリ単独だけではなく、海にあるもので環境問題を解決、などをテーマに大きな設定を加えると、より研究にオリジナリティが出そう。
③ ネギボウズで海を救おう!!!~ネギボウズによる海洋汚染物質の除去~
#ネギボウズ #SDGs #海洋汚染問題 #汚染油 #海洋汚染物質
どんな内容?
ネギボウズで海洋汚染物質を除去し、海を救おう!という研究です。世界的な海洋汚染の一つとして油による汚染がありますが、油により光が遮られ海藻などの成長が妨げられるほか、生息する鳥の羽が溶けたり、色がついたりなど深刻な被害があります。
生徒はある日、探究へのヒントを見つけました。ネギボウズの花紛が朝露をはじいているのを見て、油の選択制があるのではないかと考えたのです。
その通り、ネギボウズの花粉と種の吸油性と吸水性についての実験を行ったところ、すべての部位に吸油性があり、吸水性がないことが分かりました。しかも、10回程度まで油を吸油する耐久性と、それが茎と根本の結合力が強いためという構造的な原因にまで辿り着いたのです。汚染油の除去力に関し、ヒマワリの花粉を超えるかもしれない素材の発見です。
ここが事務局の推し!
- ネギボウズが朝露をはじいているのを見て、ネギボウズの油選択性の可能性に気づいたという洞察力。普段から環境について問題意識を持っているからこそできた発見と言える。
- 乾燥ネギボウズの吸油性だけではなく、実用性を見据えて、その耐久性やネギボウズ形状の差異による吸油性にまで研究を広げる探究心の旺盛さが見事。
今後に期待したいポイント!
- ヒマワリのスポンジのように、環境問題を解決する「製品」としての開発まで実現可能なのではないかと感じた。
- 環境について深く考えていることが研究から見て取れた。その問題意識と思考力をどんどん伸ばしていくことで、ネギボウズの権威含め新しい環境解決発見者になる将来を期待!
④ 「い草の髄」の重油吸収剤
#天然素材で重油回収
どんな内容?
天然素材を使用して海の重油を吸収し、生態系への悪影響を防ぐための研究です。従来のオイルフェンスや薬品を使用した重油の回収は、効率が悪く環境への負荷がかかるなどの問題があり、その解決のために、天然素材を使用しての新たな手法の開発に取り組みました。
生徒は、素材として、い草、和紙、稲わらには小さな穴が多数開いているため毛細管現象が起こるのではないかと考え、各素材の重油や家庭の廃油の吸収量について実験しました。
その結果、い草の髄の部分が、キッチンペーパーの4.6倍の廃油吸収量があり、重油については水の12倍以上の吸収をすることが分かりました。しかも水に浮くという特徴もあり、海で利用するのにもピッタリです。素材の構造を考察することから、環境課題を解決する素材の発見に至った探究の好事例です。
ここが事務局の推し!
- 海の環境問題の現状や背景などしっかり調べて、課題も的確に捉えている。
- 重油吸収素材の候補を、素材の物理的構造などから複数選出し、切り口別の吸収量比較など緻密な実験を行って結果を出したこと。
- い草を活用し新たな価値を生むことで、い草の生産者支援や伝統文化の保護にも繋がりうるという考察など、一面的ではないSDGsの好循環についても考えを巡らせる俯瞰力の高さ。
今後に期待したいポイント!
- 実用化を見据えて、材料費や加工費などの検討、重油別のテスト、また様々な自然条件下での検証を検討しており、製品化されるのが楽しみ!
- 色々な分野のサステナブルな成長に繋がりそうな研究なので、色んな外部団体と連携して育てていって欲しい。
◇ ◇ ◇
本記事では、課題解決策を展開するテーマの中でも、特に事務局が推した作品たちをピックアップして紹介いたしました。
今回の探究成果から新たに見つかった発見や課題を存分に生かして、探究を続けていってほしいと思います。
「自由すぎる研究グランプリ」は、「学校で行う探究の成果をより多くの人に評価される場があればいいな」と考えている先生方や生徒の皆さんにとっても活用していただける大会です。
本大会の次回開催時期は未定ですが、またパワーアップした形で帰ってきます。
今回は応募が間に合わなかったという方も、ぜひ次回から挑戦してみてくださいね。
また、今回の「自由すぎる研究グランプリ」についての結果は公式ホームページにて公表中です。
ご興味のある方はぜひご覧くださいませ!
執筆:向井小次郎
企画・編集:佐瀬友香(自由すぎる研究グランプリ事務局)
<これまでの事務局推し作品紹介記事もご覧ください!>
【第一弾】企業に見立てたチームを結成! ソリューションを展開シリーズ
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