高校での探究が本格化するなか、例えば、地域創生やSDGsといったことに対して、多少なりとも課題意識や興味を持つ高校生は間違いなく増えていると思います。その中でもどのような課題に注目しているのか、さらには、その課題に関係するどのような活動に興味を持っているのか?といったところまで意識の解像度を上げて捉えることができるのが、探究活動をしていくことの一つの価値だと思います。
ですから、大学の発信している情報からもできるだけ、具体的にどのような点に注目した学びなのか、どのような活動に関連する学びなのかといったところを見に行くと、その大学や学部の魅力や特徴が分かりやすくなるのではないかと筆者は考えます。
今回は専修大学、ならびに系列の石巻専修大学のホームページなどの情報をもとに、特に地域課題やSDGsといった側面から特徴的な学びなどの整理をしてみたいと思います。
■企業としての取り組みを考える「経営学部」
まず、経営学部の事例として、青木ゼミの「フードロス削減をテーマとしたビジネスプランづくり」や、見山先生の「ビジネスデザイン特講」などの事例が発信されていました。
青木ゼミの事例ではショッピングサイト運営企業との連携、見山先生の事例ではデザインツールを展開しているAdobe社との協働によるデザイン思考の活用など、切り口は違いますが「ビジネスプラン」を提案する学びになっています。
同学部のパンフレットなどにもあるように、「1」を「100」にする経営学科のほかに、「ゼロ」から「1」をつくるビジネスデザイン学科を2019年以降開設している特徴が表れているように思います。
■お客様に届ける手法を学ぶ「商学部」
商学部の事例では、新島ゼミの「エシカルイベント」における、商品開発とマーケティングとしてのイベント開催や、奥瀬ゼミの「避難所生活での不便を解消する新商品の商品化」における、現実にある課題を解決するための商品開発などが発信されています。こちらもそれぞれ商品企画の背景などは異なりますが、とある課題に対する具体的な解決策としての商品づくりや、販売の為のマーケティング環境の整備などが行なわれています。
■社会全体への働きかけを意識する「経済学部」
経済学部の事例では、飯沼ゼミの「SDGsよこはまCITY夏での取り組み提案」が発信されています。ここでも様々な社会課題がテーマとなっていますが、情報やデータの分析に基づく提案・提言と言った切り口が特徴的だと思います。
■高校生に分かりにくい学部の違いも事例を通せば理解が進む
高校生にとって「経営学」「商学」「経済学」などは混同しやすく、何が違うのかよく分かりにくいものですが、これらは別々のものではなく、経営学では「ビジネスプラン」といった企業としての取組を考える傾向が強く、商学ではより具体的な「商品づくり」やそれをお客様に届けるための手法(マーケティング活動)を中心に取り扱い、経済学では「情報やデータからみた分析」をもとに社会全体への働きかけを意識していることが、具体的な事例によってより明確に伝わるのではないかと思います。
上記の三つの学域だけではなく、ネットワーク情報学部の事例「ネットワーク情報学部プロジェクト中間発表会」では、IT技術を活用した様々な社会課題決が発表されていますし、系列の石巻専修大学理工学部機械工学科 梅山教授の「自動車工学研究室」の取組みでは、未来社会で必要になる小型電動モビリティについて工学を使った解決策を模索しています。
さらに、専修大学では、一見、社会課題の解決とは関連が無い印象がある文学部においても、環境や地域の問題に対してフィールドワークを重視しながらアプローチする「環境地理学科」の説明や、人間科学部においても、「環境・災害・コミュニティ」などの地域の変動にも注目する「地域・エリアスタティーズ系」を含む「社会学科」の説明も見ることができます。
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以上のように、地域創生やSDGsに関するテーマと、大学での学びは直線的に1対1で対応しているのではなく、様々な「切り口や見方」からのアプローチがあるということを知り、その中で、自分が何を軸に学びたいのかを選択していくことが大切です。ぜひ、探究的な学びで扱ったテーマをきっかけに、このような意識を高めていただければと思います。
トモノカイでは、今後も探究的な学びと進路選択について、掘り下げて行きたいと思います。
[今回ご紹介した大学]
執筆:日本探究部編集部