【図解】大学受験はどう変わった? 2020年度までの入試制度の変遷

2020年度から始まる入試改革。大学入試センター試験に代わり、新しく「大学入学共通テスト」が導入されることが決まりました。1949年の「一期・二期校制」の開始から、さまざまな変遷を遂げてきた入試制度ですが、それぞれの変化にはどのような意図があったのでしょうか。

受験機会の複数化や大学の序列化など、その時々の問題と向き合い、より良い教育のあり方追求してきた入試制度。それは、教育の試行錯誤の一つの形でもあります。

これまでの入試改革の意図や流れを振り返りながら、思考力や問題解決力を重要視する今後の入試について見ていきましょう。

目次

  1. 1949年:大学入試の始まりとなった「一期・二期校制」
  2. 1979年:面接等の導入が始まった「共通第一次学力試験」
  3. 1990年:良質な問題の確保につながった「大学入試センター試験」
  4. 2021年:新時代の入試の形となる「大学入学共通テスト」
  5. 時代に合わせて変化する入試の形

1949年:大学入試の始まりとなった「一期・二期校制」

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旧・教育基本法の制定(1947年)により、新制大学と呼ばれる現在の4年生大学の形が始まりました。そこで、1949年より、1府県1大学の方針に基づき新設された国立大学の入試制度として、大学を一期校・二期校に分けて入試を行なう「一期・二期校制」がとられました。

「一期・二期校制」のグループ分けは、文部省の「大学入学者選抜実施要項」により定められ、基本的に異なる都道府県の大学が同期校とされました。その目的の一つは、都市部への進学の集中を防ぎ、受験者をさまざまな地域の大学へ分散させること。また、一期校には東京大学や大阪大学などの有名国立大学が集中していたため、複数の有名国立大学への受験を阻止する狙いもあったと言われています。

試験日は、初年度の1949年のみ一期校が6月初旬、二期校が6月下旬で、翌年以降は一期校が3月初旬、二期校が3月下旬でした。二期校の試験は一期校の合格発表後に行なわれ、現在の前期・後期のような位置づけとなっています。また、試験内容はそれぞれの大学によって異なり、難問や奇問の出題が多く見られました。

その他、一期校・二期校の区分には学部の偏りが見られることや、一期校を中心とした特定の大学で激しい受験競争を招いたこと、二期校の試験日程が一期校の合格発表直後のために欠席者が多かったこと、一期校・二期校間の学歴差別の助長など多くの問題点が指摘されていました。

1979年:面接等の導入が始まった「共通第一次学力試験」

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一期校への優秀な学生の集中や序列化による「二期校コンプレックス」などが問題視されていた一期・二期校制度でしたが、一度の試験だけでなく面接など多様な面から選考すべきとの理由で廃止され、国公立大学で「共通第一次学力試験(以下、共通一次試験)」が導入されました(1979年)。

共通一次試験は、すべての国公立大学で同日・同問題で実施。1月に行なわれるこの試験と3月の各大学の二次試験の二段階での入試制度へと変化しました。また、高校までの一般的な学習内容を基に作られる共通一次試験は、学力を判断する良質な問題の確保につながりました。なお、共通一次試験は原則5教科7科目のマークシート式で行なわれましたが、二次試験では教科数が減少し、面接や小論文、推薦など、さまざまな選抜方法が開始しました。

この試験制度の導入により、高校以下の指導内容も受験を意識したものとなり、学習内容が変化するきっかけにもなりました。一方で、国公立大学から1校のみの受験であることや大学進学率の増加により、特定の大学を始めとした受験戦争はより激化。大学ごとの成績の優劣や偏差値を重視した進路指導などの問題も浮き彫りになりました。

1987年度には、国立大学の試験を2日程で実施する「受験機会の複数化」が導入されました。これは受験者の選択機会の拡大を目指した取り組みでしたが、大学によっては大量の入学辞退者が出るなどの問題もありました。

1990年:良質な問題の確保につながった「大学入試センター試験」

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受験市場における大学の序列化や受験機会の複数化による入学辞退者の増加などが問題視された共通一次試験は1990年、「大学入試センター試験(以下、センター試験)」へと名称を変更。国公立大学だけでなく私立大学の入学試験でも、高等学校段階における基礎的な学習の達成の程度を判定するための一次試験として利用されるようになりました。

センター試験は、全国で一斉に同じ問題を使用して各大学の試験前に行なわれ、大学の特色に合わせて利用教科や科目数などが自由に決められています。また、国公立大学ではセンター試験で大学が指定した教科や科目を受験することが出願資格となっており、多くの大学では5教科7科目(合計950点)を基準としています。

センター試験は、良質な問題の確保や大学入試の多様化という役割がありながら、知識をつけることや考える力が必要となることなどが評価されていました。しかし、時代の変化に伴い、問題を解決する力や新しい価値を生み出す応用力を重視した内容へと変化することとなりました。

2021年:新時代の入試の形となる「大学入学共通テスト」

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センター試験では知識量が重要視されるマークシート式の問題が採用されてきましたが、思考力や問題解決力が必要とされる現代の時代背景により、2020年度(2021年)からはこれまでのマークシート式の問題に加えて、記述式や応用力が求められる問題を追加した「大学入学共通テスト」がスタートすることになりました。

大学入学共通テストは、従来のセンター試験と同様に1月中旬の2日間で実施されます。また、2020年度の実施よりすべての試験内容が変わるのではなく、少しずつ変化していく部分もあるため、その年ごとの対応が必要となるでしょう。

具体的な変更点には、国語や数学Ⅰなどでは、これまでのマークシート方式に記述式問題が加えられることになり、試験時間も10〜20分延長となりました。加えて、英語では、マークシートとリスニングに加えて、国が認定した民間の資格・検定試験の試験結果も大学の入試と併用されることになりました。民間の資格や試験が利用される経緯には、読む・聞くだけでなく、書く・話すことを含めた4技能を評価するためという理由があります。なお、2023年度(2024年)で共通テストの併用や利用は廃止され、認定試験のみとなります。

時代に合わせて変化する入試の形

入試は、大学入学者の選考のためだけでなく、問題解決を繰り返しながら、時代に合わせた教育のあり方を作ってきた制度です。今後も試行錯誤を重ねながら、より良い制度へ形を変えていくことでしょう。

また、生きるために必要な基礎力や応用力が求められる「大学入学共通テスト」は、入試後の受験者の生活にも有益となること間違いありません。これから試験を受ける受験者も、指導を行なう教員もぜひ前向きに取り組んでみてくださいね。

(執筆:橋本結花 図版:藤田倫央 編集:野阪拓海/ノオト)

記事公開日:2020年7月4日

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