探究活動における生徒との関わり方とは

中学に続いて、高校でも、総合的探究の時間の試行期間に入り、まずはやってみよう、と探究活動に取り組み始めた学校も多いことと思います。

ここで、いざやってみたものの、これでいいのだろうか?と疑問がわいたり、
生徒が受け身になってしまう…生徒の思考がなかなか深まらない…など様々な悩みが出てくることもあるのではないでしょうか。

そこで、今回は、長年探究活動に取り組まれてきたベテランの先生方の知見を共有したいと思います。

目次

  1. 探究活動では、先生の在り方が大切
  2. 探究活動では、先生のスタンス転換が鍵
  3. 今からでも、すぐにできること
  4. まとめ -探究活動における生徒との関わり方-

探究活動では、先生の在り方が大切

ある熊本県で長年探究活動に取り組まれている県立高校の先生から、このようなお話を伺いました。

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私自身も、この先生の言葉に、なるほどなと思ったことを覚えています。
確かに、探究活動をできる場って今は、学校しかないですよね。
だからこそ、その探究活動の場をどのような場にできるかは、非常に重要ですし、先生がその場を楽しめているか、などといった先生の在り方がとても重要という話は非常に的を得ているなと、私自身、非常に納得したのでした。
何事も、楽しんでいる人といっしょにやると、参加している人も楽しいものですし、楽しめていない人といっしょに取り組んでも、参加している人だって楽しくない。
これは探究活動の場においても、一緒ですよね。

一方で、初めてやるものに対して、「楽しんで」と言われても……
そんな無茶な。
正直、探究やったことないし、わからないし…不安だし…
そんな気持ちがわく方もいらっしゃると思います。

ここで、なぜ不安になるのか?
以下のような想いをお持ちの方も少なくはないのではないでしょうか。

「探究活動のイメージがわかないのに、指導はできるのか?」

そして、その奥に、実はこんな想いがあったりするかもしれません。

・生徒に質問、相談されて、わからなかったらどうしよう…
・失敗したくないな…

もしも、こんな想いがわいた場合、
「自分が教え導かねばならない」
というスタンスをお持ちなのではないでしょうか?

実は、探究活動では、このスタンスを捨てることから始まります。

「生徒といっしょに考え、サポート・伴走する存在になる」

これが探究活動を行う上での鍵となります。

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探究活動では、先生のスタンス転換が鍵

ここで、この生徒と関わるスタンスについて、実際に現場の先生から伺った声を2つご紹介させてください。

まずは、神奈川県の私立学校の先生からの声について。
この先生は、学校全体で探究活動を軸にして改革を進めていこう、という動きがある中、探究活動の主担当として奮闘されている先生です。

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なお、この先生とお話したときに、こんなこともおっしゃられていたことが印象的でした。
「私は、やったことがないことや新しいことでも、とりあえずやってみよう、って思うタイプなの。だからわからない、と生徒に言うことも全然気にならないのよ。でも、それが難しい先生は苦労されている印象があるのよね…」

続いて、ご紹介するのは、岡山県の県立高校の先生からの声について。
この先生は、10年以上前から、地域課題をテーマにした探究活動に取り組まれている大ベテランの先生です。

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この先生のお話を伺ったときに、「うまくいかない前提で、そこから何が学べるのかを考えられることが大切であり、それは生徒も先生も一緒です」という言葉に、深くうなずいたのを覚えています。
さらに、こんなこともおっしゃられていたことが印象的でした。
「失敗して、それをどう乗り越えるか、その力こそ、生きる上で重要だと思うんですよ。だからこそ、生徒には、わからないことは何も恥ずかしいことではないし、どんどん行動して、どんどん失敗しよう。むしろ失敗はよいことだと伝えています。」
「先生は、わからない方がいいんです。わかると、生徒に教えようとしてしまうでしょう。それが、生徒が自分で考える、という学びを奪っているんです。先生がわからないことは、むしろ強みだと思いますよ」

このように、探究活動では、
「教え導く」から「ともに考え、サポート・伴走する」へ、スタンス転換が鍵
と言えるのではないでしょうか。

ただ、すぐに対応できるかというと、今まで慣れてきた指導スタイルもあるかと思いますので、少し難しい方もいらっしゃるかと思います。その場合は、実践しながら、徐々に感覚を掴んでいけるとよいですよね。

今からでも、すぐにできること

探究活動では、スタンス転換が鍵である、とのお話をしてきました。

ここで、もうひとつ、生徒と関わる上で、とても大切であり、かつ意識次第で、今すぐ誰にでもできることをお伝えさせて頂ければと思います。

それは、

「それでいいよ、と生徒のありのままを受け止める気持ちを持つ」

ということなのです。

ここで、東京都の私立高校の先生のお話を共有させてください。

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この先生の話を伺ったときに、すごくすばらしいお話だけど、本当なの?わかるようで、ちょっとわからない…と実は思う自分がいました。
しかし、その後伺った、生徒の実例がすごかったのです。

ある日授業で、温暖化の影響で海面が上昇し、近い将来沈んでしまう国・ツバルの話が出ました。この時、何人かの生徒たちは、「数年後に沈んでしまうなんてことが本当にあるの?」、「ツバルの現状をこの目で確かめたい!」と関心を抱きました。

そこで生徒たちはツバルへの旅費を集めるために、クラウドファンディングを実施。その結果、目標金額(なんと60万円以上…!)が集まり、実際にツバルへ行くことになりました。

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現地ではフィールドワークを行ったり、子どもたちと交流したりして、ツバルの人々の生活を調査しました。また、彼らの活動を聞きつけたツバルの首相から官邸に招かれ、数時間に渡って懇談したのだとか。こうした活動の中で、生徒たちは現地の人々の暖かさに触れ、より一層ツバルへの想いを強めることになったそうです。

そして、日本に帰ってきた生徒たちは、ツバルの現状を多くの人に伝えるために、自ら各地で報告会を開催しているのだそうです。

さらに、印象的だったのが、この生徒たちの取り組みに対して、先生方は「私たちは何もしていません。ただただ、生徒たちのありのままを受け止めていたら、彼らが自然と自分たちから動き出したんです」とおっしゃられたのです。

正直、度肝を抜かれました。

それほどまでに、ありのままを受け止めることで生まれる、安心安全の場というものが、探究活動において、いかに重要であるか。この実例は、それを物語っているのではないでしょうか。
このお話を伺ったとき、他のベテランの先生方にお話を伺っても、「安心安全の場」というキーワードを言われる先生方が複数名いらっしゃったこともうなずけました。

まとめ -探究活動における生徒との関わり方-

探究活動では、「先生の在り方がとても重要」です。

ぜひ、生徒と関わる時に、以下の3点を意識してみて頂ければ幸いです。

① 先生は生徒が自ら進めるようにサポート・伴走する役割
② うまくいかなかった経験は学びにつなければいい
③ 生徒のありのままを受け止める気持ちで

(執筆:神原洋子/トモノカイ)

記事公開日:2019年12月6日

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