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今年度から高等学校において必修となった「総合的な探究の時間」。
「探究型入試」を採用する大学も増えていることからも、進路やキャリアにも影響しうるこの探究的な学びへの注目度の高まりを実感することができます。
本記事では、惜しくも1次審査の通過は逃してしまったけれども、トモノカイの〈自由すぎる研究グランプリ運営事務局〉が推した作品に着目してみました。
本当に自由すぎるテーマが集まっており、一度に記事で紹介することが難しいので、いくつかのカテゴリーに分けたシリーズ記事としてご紹介します。
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- 今回のカテゴリー:思わず未来にワクワクしてしまうシリーズ
- ① 魚の耳石を用いた年齢測定方法の確立
- ② サイエンスコミュニケーションプロジェクト
- ③ 邦人から朋人へ~私が思い描く新たなる共感と共創の文化社会~
- ④ 高校生×ICT 令和の生徒会長が600人をコントロールしてみた!~県高「探究フォーラム」編~
- ⑤ ナマコの不思議な生態とこれからの人間の医学
今回のカテゴリー:思わず未来にワクワクしてしまうシリーズ
今回紹介する研究作品は、どれも今後に無限の可能性を秘めているような、ワクワクするものばかりです。これからもっと探究が深まったら、未来が大きく変わるかも? そんな可能性を感じていただけるはずです。
※ハッシュタグは、応募時に参加者が任意でつけてくれたもので、画像は、提出された作品の表紙です。
① 魚の耳石を用いた年齢測定方法の確立
どんな内容?
地球温暖化の進行で海水温が上昇し、魚が小型化しているというニュースに着目し、それの実証実験に取り組んだ研究です。
生徒は仮説として、水温の上昇により魚が小型化するのであれば、より水温が高い太平洋産の魚の方が、日本海産の魚より小さくなるのではないかと考えました。
試行錯誤の結果、同じ年齢の個体同士で大きさを比較することが必要だと考え至り、まずは魚の年齢測定方法の確立に取り組みました。調査により魚の年齢は耳石や鱗にある年輪模様の本数で数えられることが分かり、実験により年輪の本数が多いほど体長が長くなるデータを得ることができました。
新型コロナウイルスの影響で、水温の違いによる同年齢の魚の大きさを観察するまでには至りませんでしたが、魚の年齢を測定する手法確立への確実な一歩を踏み出しています。
ここが事務局の推し!
- 最初の目的のみに縛られず、トライアンドエラーを繰り返して魚の年齢測定法をより確かなものにしていこうとする柔軟性
- 魚の耳石を取り出す技術を向上させた「技術者」としての成長も頼もしい!
- ニュースで見た内容をきっかけに、実際の実験に移していく行動力。
今後に期待したいポイント!
- 別のサンプル種の飼育など、さらなる年齢測定方法の精度を上げる方法を進めているそうなので、より精度の上がった結果に期待。
- 魚が小型化していることが実証できた場合、例えば小型化が環境や人間に与える影響や、その影響をプラス方向に向けていく方法など、思考と探究を深めていって欲しい。
② サイエンスコミュニケーションプロジェクト
#SciCommProject #サイコミプロジェクト
どんな内容?
小学生向けのサイエンスジャーナルを作成し、将来的に一般市民と科学者のコミュニケーションを改善していこうというプロジェクトです。生徒は科学分野に興味があり、科学について周りの人にもっと知って欲しいという思いからスタートしました。
ここで実際に制作したサイエンスジャーナルは、サイエンスコミュニケーション(科学のおもしろさや科学技術をめぐる課題を人々へ伝え、ともに考え、意識を高めること)の説明や社会的意義に始まり、人類学について小学生でも分かりやすく楽しめる内容に仕上がりました。
読者の考えを記入する欄もあり、一方通行ではない参加型の構成になっており、読了後のアンケートでは、科学を身近な存在だと感じさせることに成功しています。
ここが事務局の推し!
- 社会全体をより良いものにしていくために、未来を担う小学生から科学に興味を持ってもらおう、というテーマの深さと先を考える力。
- 小学生でもわかりやすいジャーナルを作成する、コンテンツ構成力。
- 科学×教育の力を信じる熱意に溢れている!
今後に期待したいポイント!
- 今回の人類学以降も、色々な種類の「科学の学び」を提供してくれることが想像できる。
- とても良いコンテンツなので、外部の協力など拡散の手法を検討して多くの小学生に届ける方法が見つけられると、もっと世の中にサイエンスコミュニケーションが浸透しそう。
③ 邦人から朋人へ~私が思い描く新たなる共感と共創の文化社会~
#僕らの時代 #朋人 #多文化共生 #多文化社会 #多文化共感 #多文化共創 #参政権
どんな内容?
「日本を外国人参政権が認められる国にする」というテーマで、識者との対談や街頭インタビューを通して、日本社会の変革の可能性を考察していく研究です。
生徒は、日常の中で、日本に居住する外国人へのヘイトスピーチの存在を知り、衝撃を受けたところから探究心が芽生えました。関係する論文を読み、コリアンタウンの成り立ちやそこに暮らす人の生活について論文の著者にヒアリングするなどして、在留外国人について知識を深めていきました。
アカデミックな知識を得た生徒は、次に生の声を求め、街に出て在留外国人へインタビューを試みます。そこで聞いた彼らの現実などから、問題は参政権がないことにあるのではないかと考え、日本人と在留外国人の相互理解による新しい日本の文化社会を思い描きます。
ここが事務局の推し!
- 外国人の参政権が認められる国にする、というゴールに向かって識者ヒアリングやフィールドワークで考察を深めていく行動力と探究心。
- 日本を生活基盤にしている人を同門・同類の仲間として定義し、新たな概念である「朋人」という言葉を創るクリエィティビティ。
- 研究を進める中、情熱と知識のバランスを取りながら成長していく姿が素晴らしい!
今後に期待したいポイント!
- 日本人と外国人との理解が深まる交流プロジェクトを進行中とのことで、どのような形で行うのか期待。
- 同じように、日本以外の国では、そこに住む外国籍の人の権利や立場がどのようになっているか調べると、より広い視点で日本の現状を把握できるかも。
④ 高校生×ICT 令和の生徒会長が600人をコントロールしてみた!~県高「探究フォーラム」編~
#高校生 ×ICT
どんな内容?
学校での発表会を、ICTを活用していかに円滑に運用するかという実証実験的な探究作品です。
これまでの発表会では、各班に分かれた生徒がそれぞれ発表する際に、聴講者が自由に動き回り運営が難しくなるという課題がありました。そこで、ICTを駆使して「制限時間内に終了」「聴講者数はバランス良く」「コロナ対策・安全」「聴講者は見たいものを見る」というミッションを掲げた上で、それぞれの課題を整理し、実践に移しました。
当日は、綿密なシナリオのもと、プログラミングによる導線予測やGoogle Meetでのモニタリングなどを活用し、1人のオペレーターで全ミッションをクリアすることができました。
600人の安全を確保したスムーズな発表会運営は、ICTと生徒の考える力でなされたのです。
ここが事務局の推し!
- 探究の発表会の運営そのものを探究のテーマにするという[13] [14] メタ的な着眼点と課題認識力。
- 課題の整理と現実的な解決方法は大人も顔負け。
- プログラミングによる導線予測やGoogle Meetの活用など、まさにこれからの時代に適合したICT活用と言える。
今後に期待したいポイント!
- 人の分散を意識した安全な運営手法は、大きなイベントにも役立ちそう!
- テクノロジーを人の為に使える才能と想像力はとても貴重。その力をどんどん伸ばしていけばイベントごとに限らず色々なことを改善していけるのでは。
⑤ ナマコの不思議な生態とこれからの人間の医学
#ナマコ #棘皮動物 #海洋生物 #すごくなさそうで凄いナマコ #キャッチ結合組織 #ナマコの巧みな生存術
どんな内容?
ナマコの自己再生力に着目し、その力が医療の世界で役に立つのではないかと考察した研究です。生態や体の仕組み、他の生物との比較などを調べる中、ナマコの腸の自己再生や、体を横に切ると分裂して二匹に分かれることなどから、初めから遺伝子に何らかの再生能力を持っているのではないかという仮説に辿り着きます。
研究を進める中、乾燥ナマコにより人間の肝臓の再生が促されるという文献に辿り着き、ナマコと医療が繋がっていることを確信するに至りました。
また、ナマコが持つ「キャッチ結合組織」という皮の硬さ・柔らかさを変化させる神経にも探究心が向かうなど、生徒の自由な思考力を感じられる作品になっています。
ここが事務局の推し!
- ナマコの種類や生態、器官について詳しく調べる独特の視点に個性を感じる。
- ナマコ→医療という一見飛躍した関係性も当作品を読むと納得性がある。
- 何といってもナマコ愛に溢れている。
今後に期待したいポイント!
- キャッチ結合組織の硬軟変化を利用して何かの素材ができないかと考えているとのことで、そのチャレンジ精神を活かして探究を進めて欲しい。
- ナマコへの強い興味があり、非常に興味深い探究をしていたので、もし実際のナマコを活用して実験ができるようになれば、もっと新しい発見ができそう。
◇ ◇ ◇
本記事では、課題解決策を展開するテーマの中でも、特に事務局が推した作品たちをピックアップして紹介いたしました。
今回の探究成果から新たに見つかった発見や課題を存分に生かして、探究を続けていってほしいと思います。
「自由すぎる研究グランプリ」は、「学校で行う探究の成果をより多くの人に評価される場があればいいな」と考えている先生方や生徒の皆さんにとっても活用していただける大会です。
本大会の次回開催時期は未定ですが、またパワーアップした形で帰ってきます。
今回は応募が間に合わなかったという方も、ぜひ次回から挑戦してみてくださいね。
また、今回の「自由すぎる研究グランプリ」についての結果は公式ホームページにて公表中です。
ご興味のある方はぜひご覧くださいませ!
執筆:向井小次郎
企画・編集:佐瀬友香(自由すぎる研究グランプリ事務局)
<これまでの事務局推し作品紹介記事もご覧ください!>
【第一弾】企業に見立てたチームを結成! ソリューションを展開シリーズ
【第二弾】環境にイイね!地球のためにできることを考えるシリーズ
【第三弾】これは面白い! 高校生ならではの発想が集まった、自由すぎる研究グランプリ事務局の推し作品をピックアップ!
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