どのような体制で、どのように連携していけば良いのか?

探究活動をどのように設計していくのかについて、
学校ごとに、体制を組んで検討が始まっていることと思います。

多くの学校ではどのような体制で、そしてどのように学年でチーム作りをしながら、探究活動に臨んでいるのでしょうか。
今回は「チーム作り」について、お話をしていければと思います。

目次

  1. 3年間の全体計画を設計するチームを作る
  2. 学年でどのように連携していくか
  3. 今回のまとめ

3年間の全体計画を設計するチームを作る

現在、スタートをきっている多くの学校において、探究の計画を立てるにあたり、総合的な探究の時間を検討する探究計画の全体統括チームを結成して、3年間全体の計画を設計していることが多いのではないでしょうか。これは、3年間を通して、一貫した学びを生み出すことを目的としています。

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ただ、学校によっては、全体計画を設計するチームがなく、学年ごとに、探究活動の主担当を置いて進めているケースもあるかと思います。
この場合、学年ごとに、各々やりたいことをやるため、各学年でやっていることがバラバラになりやすかったり、そもそもどのような力を育てたくてその活動をいれていたのか、その目的が引き継がれず、活動が気付けば形骸化したりと、学校として、3年間を通しての学びの連携を取ることが難しくなりがちです。

「3年間を通して、生徒にどのような力を育てたくて、そのためにどのような活動を行うのか」という一貫した計画を立てることが非常に大切であるため、特別の事情がない限りは全体統括チームを結成することをおススメします。

※各学年に計画共有するも、先生方が協力的に動いてくれない…
そんなお悩みがある方はこちら

いよいよ各学年で探究活動がスタートしていきます。

探究活動は内容によって、フィールドワークにでたり、個別に生徒の支援にあたったりと、先生方の支援内容は多岐にわたります。だからこそ、総合的探究の時間は、(特に学年内の)先生同士での連携が重要になってきます。
一方で、探究活動は、どうしても経験値の高い先生もいれば、ご経験のない先生もいたり、探究的な進め方が得意な先生もいれば、苦手意識を持たれている先生がいたりするのが実情ではないでしょうか。

では、どうやってうまく連携を取っていけばいいのか。
うまく連携をとっていくには、チーム作りが欠かせません。

ここで、チーム作りに向けて、すばらしい工夫をされている、京都府R高校の事例をご紹介したいと思います。

R高校では、本格的な探究活動を始めたばかり。
どのような探究活動を実施しているかというと…
高1では、1,2学期で思考力やキャリア意識を醸成する演習問題を実施することで土台作りをし、3学期から京都北部を魅力化する提案を行うプロジェクト型の学習に取り組み、探究プロセスの流れを学習。
高2では、高1で学んだ探究プロセスの流れを活かして、今度は地元の市を魅力化する提案を行うプロジェクト型の学習に本格的にチャレンジ。
2学期からは、個人でリサーチクエスチョンを立てて、テーマ研究を行い、高3にかけて、論文にまとめていくというものです。

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ここで、探究活動を進めていくにあたり、先生全員が探究活動は初めてで経験値がないという状態。そして、探究的な進め方に抵抗感がない先生と苦手意識を持たれている先生が混在している状態でした。

そのような中、学年の主担当の先生が以下の提案を学年のメンバーに行いました。
『週1回実施の総合的探究の時間に合わせて、授業の進め方を毎週1回事前にすり合わせよう。そして、そのタイミングで、前回の振り返りも行おう』

その理由は、全員探究活動が初めてなので、進め方のイメージがわかないメンバーが多くいたためです。そもそも、人間は、新しいことで、かつイメージのわかないものには、億劫になり、前向きに動き出すことが難しいもの 。それを進め方のイメージを具体的に提示することで、周りのメンバーがイメージを持って、動き出しやすいようにサポートしたのですね。

さらに主担当の先生は、毎週1回の事前打ち合わせのタイミングで、ツッコみどころがある授業案のたたき台を敢えて提示するようにしました。

ここも、自分が作った案を、このようにやってください、としてしまうと、人間、やらされ感が生まれてモチベーションが下がるものです。しかし、ここでツッコみどころがある状態のたたき台を提示して、みんなで議論できる場を整えて、メンバー全員が「参加できる」時間をもてたことで、メンバーが自分ごととして、当事者意識を持って探究に取り組むようになることに、効果的だったようです。

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さらに、この主担当の先生の秀逸な工夫は続きます。
探究の授業の当日は、授業に入らない先生に、各クラスを見て回り、「各クラスを担当したそれぞれの先生のよかったところ」をメモするように依頼しました。

例えば、
-初めの導入時の話の持っていき方がとてもよかった
-途中で生徒が行き詰ったときの声掛けが、思考を深める投げかけになっていて、すごくよかった
-終始笑顔で、安心感の持てる空気づくりがよかった …etc

それぞれの先生のよかった部分のメモをためておき、週1回の打ち合わせのタイミングで、その内容を発表するようにしたのです。

ここには、主担当の先生のこんな想いがありました。
・客観的な視点でよかった部分をほめてもらうことで、探究的な進め方への自信につなげてもらいたい
・うまく進められる先生のノウハウを全員で共有して、全体のスキルアップを加速させたい

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初めてのことで内心、不安も抱えながら、授業に臨むこともあるでしょう。そして、なかなか自分一人ではいい点改善点を自覚しにくいもの。
そこで、チームでお互いを見合い、『褒め合う』ことで、前向きな雰囲気を醸成していきました。

「まずは、教師である自分たちでも、探究活動に対する自信や手応えを持つことが大切だと思ったんです。だから、改善点に対する注意やアドバイスよりも、『褒め合う』ことに重点を置くことにしました」とその主担当の先生。

そして、そのような小さな積み重ねを丁寧に週1回、1年間続けていったところ、気付けば1年前に探究活動に苦手意識を持って、及び腰だったメンバーが、積極的にサポートに回ってくれるようになったという変化を体感されたそうです。

本当にすばらしいことですよね。

その主担当の先生からお話を聞く中で、最後にひとつ、印象的なことがありました。
「始める段階で、学年のメンバーと本音の会話をしたんです。
ぶっちゃけ、これから始まる探究活動のこと、どう思ってるか。
正直、先が見えなくて不安を抱えている人も少なくありませんでした。
でもそれを吐き出して、受け止めあう時間を持ちました。受け止め合えて、共有し合えたことは大きかったように思います。
そうだよね、不安だよね。自分もぶっちゃけ不安。
でも、前に進むしかないから、いっしょにがんばろう、と。」
そうやって不安があってもいいから、そこの気持ちにも寄り添いあいながら、前に進もう、と理解しあうことも大切だと思います。

今回のまとめ

探究活動について、どのような体制で、どのように連携を取っていけばいいのか、ということについて話をしてきました。

〈校内体制〉
校内に全体統括チームを設ける
→3年間を通してどのような学びを生み出したいか、一貫した計画を立てる

〈学年内での連携の取り方〉
学年内でのチーム作りがとても大切!
・探究の時間ごとに、前回の振り返りと次回進め方打合せを設ける。
・ふり返りの際には、よかった点の褒め合いで、ノウハウ共有を
・進め方打合せの際には、授業案のたたき台を作り、メンバー全員で議論できる場を

ということでした。
少しでも進め方について、参考になれば幸いです。

(執筆:神原洋子/トモノカイ)

記事公開日:2019年11月16日

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