受賞した探究成果を社員や研究者に直接プレゼン! 自由すぎる研究EXPO受賞者の交流会をレポート

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探究をより深めるために、社会とのつながりは必須条件!

トモノカイが主催する「自由すぎる研究EXPO」は、中高生の探究成果を社会で活躍するさまざまな大人たちが独自の観点から称賛するコンテスト。

今回、株式会社SEE THE SUNの特別賞を受賞した小島久実さん(名城大学附属高等学校 3年)と古屋美緒さん(山梨学院中学校 3年)を招いて交流会が行われるということで、当メディアの編集部員も参加させていただきましたので、当日の様子をお伝えします。

小島さんや古屋さんたち中高生にとっても、企業で活躍している大人たちにとっても、双方ともに新鮮な気付きを得られたようです。

今回の交流会が行われた会場は、逗子市にある株式会社SEE THE SUNのオフィス。土地柄、別荘が多く立ち並ぶ閑静な街中を歩いていくと、古民家を改修したという今回の会場が現れました。

参加者が集まったところで、アイスブレイクとして自由すぎる研究EXPOアンバサダーである高橋晋平氏(株式会社ウサギ)とSEE THE SUNが一緒に開発したカードゲーム「かけアイ サステナブル」をプレイ。このゲームは、いろいろなテーマが書かれたカードを二枚選んで「お題」を作り、そのお題に対して自由な発想でアイデアをたくさん出していくというブレストゲームです。

自由すぎる研究EXPOアンバサダーを務める高橋晋平 氏(株式会社ウサギ)

探究的な姿勢を育んだバックパッカーのご両親の教育

アイスブレイクが終わると、いよいよ特別賞を受賞したお二人の成果共有の時間となりました。

まず最初に登壇したのは、山梨学院中学校3年の古屋美緒さん。『「うさぎとかめ」の真実
~かめはなぜ無謀な戦いに挑んだのか~』というテーマの発表をしてくれました。

SEE THE SUN賞
「うさぎとかめ」の真実 ~かめはなぜ無謀な戦いに挑んだのか~
山梨学院中学校 3年 古屋 美緒さんの作品 <詳細はこちらから>

童話として有名な『うさぎとかめ』。かけっこ競争に臨んだ2匹の勝負が、ウサギの油断によりカメが勝利するという予想外の結末を向かえる、という多くの人が知っている物語を題材にした作品です。生物としてのウサギとカメの特徴を調べ、速度や所要時間といった情報や、物語から読み取れる舞台設定などを推論して仮説を立て、実はカメには勝算があったのではないかとする、なんともユニークな内容です。

発表を聞く大人たちは発表に聞き入り、古屋さんの発表が終わると内容の完成度の高さに驚きの声と拍手が上がりました。

そして、発表後の質疑応答では、参加者から次のような質問が投げかけられました。

ーー「どういう生い立ちをたどると、このような発想をするに至るのでしょうか?」

これに対して古屋さんは、ご両親の育て方をふり返って答えます。

古屋さん「私が生まれる前に両親はバックパッカーとして各国を巡っていたそうです。その時の経験を話してくれて、日本では当たり前のことも世界では当たり前ではなかった、とよく聞きました。そうしたことから、視野が広く持てるようになったり、身近なことも“本当にそうなのかな”と考えるようになったと思います」

会場には古屋さんのお母さんも同席されており、司会から補足を促されてお話しを伺いました。

古屋さんのお母さん「中国を訪れたときのことです。私の友人である日本人が路上でタバコを吸っていて、吸い殻を携帯灰皿に入れたそうなんです。すると、近くにいたお巡りさんに吸い殻を取られて、“こうやって捨てるんだよ!”といって路上に叩きつけられたと言っていました。そのお巡りさんは“街にゴミが無くなったらゴミを拾う仕事が無くなっちゃうだろ”と続けたそうです。こうした話を娘にしたときに、娘は中国人のお巡りさんの言うことを日本の常識からは外れていると断じるのではなく、“その人の言うことも間違いじゃないね”と言ったんです。それを聞いたときに、違う着眼点で相手を認めることができるのは素晴らしいことだと、私は娘をとても褒めました」

エピソードを聞いた会場の大人たちからは、感心する声とともに大きな拍手が再び生まれていました。

あふれ出るボルボックス愛が活動力の源泉

続いての発表は、名城大学附属高等学校3年の小島久実さん。テーマは『ゾンビボルボックスの“マイクロ電池”化』。私物の顕微鏡と容器に入った“ボルボックス”も持参し、参加者に見せていた小島さんは研究歴を尋ねられ「高校三年間をかけてます!」と応えると、会場からは“おぉ”という驚きの声があがっていました。

SEE THE SUN賞
ゾンビボルボックスの”マイクロ電池”化
名城大学附属高等学校 3年 小島 久実さんの作品 <詳細はこちらから>

小島さんの研究はボルボックスという群体を形成する緑藻を電源として活用する、という大人も顔負けなテーマの作品。光に向かって動くボルボックスの活動能力を光が無いところでも発揮させる“ゾンビ化”によって、電源としての効率を追求しようという取り組みです。

専門的な内容にも踏み込んだ本格的な小島さんの発表が終わると、参加者たちから盛大な拍手が巻き起こりました。

ボルボックスグッズで部屋があふれているという紹介もあった小島さん。まさにボルボックスへの愛情があふれるような発表を受けて、質疑応答では参加者から素朴な疑問が寄せられました。

ーー「とてもボルボックス愛を感じたのですが、その愛の対象であるボルボックスを“ゾンビ化”しようと思ったのはなぜなのでしょうか?」

小島さん「いろいろな所で聞かれる質問第一位ですね。もちろん考えてしまう部分もあるんですけど、私の研究を通じてボルボックスに関心が集まってくれればと思い、ワークショップやサイエンスコミュニケーターなどの活動もしています。今回のような機会も含め、ボルボックスの可愛さを伝えていければなと考えています」

自身の愛ゆえに研究に傾ける情熱と、その成果を通じてさらにボルボックスの魅力を伝えていきたい、という小島さんならではの感覚を感じられるコメントを伺えました。

社会人とつながることで生徒が感じたこととは

発表のあと、立食パーティ形式の懇親会へと移りました。発表した生徒二人の周りには、話を聞こうと入れ替わり立ち替わり、大人たちが列をなしていました。

普段から業務上の課題解決という探究的な活動をしているともいえる社会人ですが、中高生が学校の活動でこれほどの内容を自身で探究していることには、驚きが大きかったことの表れでもあると思います。

今回、多くの大人たちに囲まれるなかで発表に臨んだ生徒お二人に感想を聞いてみました。

立食パーティとともに大人たちとの交流を楽しむ小島久実さん(左)と古屋美緒さん(右)

古屋さん「聞いてくださった大人の皆さんが、プレゼン中に沢山リアクションをしてくださったり、笑ってくださったりして、私自身とても楽しかったです。
金賞を受賞された小島さんと直接お話できたことも、勉強になりました。小島さんのゾンビボルボックス愛に比べたら、私の研究は足元にも及ばないと思いました!笑
高校に進学したら、また皆さんの前でプレゼンできるような自由研究をしたいです」

小島さん「コロナ禍での高校生活だったので、先輩や後輩など学校内での研究でのつながり、というのはあまりありませんでした。今回、自由すぎる研究で審査をしてくれた社会人のみなさんや、今日この場で古屋さんと出合えたことなどはとても嬉しく思います。私は科学の面白さを伝えていくことにやりがいを感じているので、サイエンスコミュニケーターなどの活動を通じて、これからも多くの人に魅力を伝えていきたいです」

一方の大人たちからはどのように見えたのか。今回の会を主催した株式会社SEE THE SUN代表の金丸美樹氏は次のように語ってくれました。

金丸さん「この会を開催した理由は、まず純粋に『こんなに魅力的な探究をしている生徒さんは、一体どんな人なんだろう。会ってみたい!』という気持ちからでした。SEE THE SUNは普段から、大人も子どもも関係なく ”好き” を追及する人を集めたいという想いから、作る人と楽しむ人が集まる場を作っています。当社にも、”好き” を貫く研究員が多いので、探究心にあふれた人たちが集まると素敵だなと思いました。まず私が会いたい、そして私たちのスタッフにも生徒さんたちに会ってもらいたいし、生徒さんたちにも私たちのスタッフに会ってもらいたいと思ったのがきっかけです。
実際に会を実施してみて、やっぱり子どもも大人も関係ないな、一人の人間として素敵だなと感じました。好きなことに向かって突っ走れる、そんな素敵な人が増えたらいいなと思いました」

“子どもも大人も関係なく、好きなことに向かう人は素敵”という想いを再認識したと語る株式会社SEE THE SUN代表取締役社長・金丸美樹氏

探究を社会につながる架け橋とするために必要なこと

探究は生徒の主体性が重要。とはいえ、社会のことをあまり知らない生徒は孤独になりがちです。先生や先輩という学校内の人だけでなく、社会の最前線で課題解決に取り組む社会人と接点を持つことで、新たな気づきを得ることができ、探究を発展させていくきっかけになるのではないでしょうか。

今回の交流会でも、様々な専門領域で活躍する社会人との交流から、二人の生徒は新たな刺激を受けていたようでした。今後の研究に向けた構想も進んだようです。

また、小島さんは「“自由すぎる研究EXPO”の審査結果発表を見たときに、自分以外の人の作品タイトルを見てどんな内容なんだろう、とワクワクしました。そうした探究をしているのはどんな人なのか会ってみたいと思っていたので、今日、その想いが叶いました」と、横のつながりが生まれたことの喜びを伝えてくれました。

社会人とのつながりだけでなく、今回のお二人のように探究を通じて生徒同士もつながることで、学校だけではフォローしきれない部分も補うことが可能となってくるのかもしれません。

そうした機会の一つとして、「自由すぎる研究」のような校外のコンテストが果たせる役割があるように思います。

今年度開催中の「自由すぎる研究EXPO2024」は、5月末まで応募を受け付けており、全国から様々なテーマの探究成果物が集まってまいりました。中高生が自身の探究成果を応募することも、また学校の先生が生徒たちのものをまとめて応募することも可能です。

これまでに取り組んだレポートや論文などがあるなら、ぜひ応募してみませんか?

▼自由すぎる研究EXPO2024 公式サイト

※肩書や所属などは取材当時のものです。

執筆:日本探究部編集部

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