新学習指導要領の試行期間に入り、中核である総合的な探究の時間を具体的にどのようにしていこうかと悩まれたり、模索されたりしている学校の先生も多いことと思います。
そもそも、探究活動で立てる問いには大きく分けて2種類のパターンがあることをご存知でしょうか? さらにそのパターンごとに、探究活動の進め方も少し異なってきます。ですので、この探究活動のパターンを把握しておくと、計画の立て方や、指導の仕方にとても役立ちます。
この記事では、中学や高校でよく行なわれている探究活動には、どのようなパターンがあるのかを紹介したいと思います。
目次
主な探究活動は、「アイデア提案型」と「テーマ研究型」の2パターンに分けられる
トモノカイでは、今まで多くの学校現場に足を運び、多くの事例を見てきました。その結果、中学・高校で主に行われている探究活動は大きく2パターンに類型できるということが見えてきました。その探究活動のパターンとは、次の2つです。
1. アイデア提案型
1つ目は、立てる問いが「HOW(どのようにして)?」に基づいているもので、いわば「アイデア提案型」と呼べるようなもの。
例えば、
・〇〇地域の人口減少に歯止めをかけるため、観光客を呼び込むにはどうすればよいか?
・地元のシャッター商店街を盛り上げるためには、どうすればよいか?
・日本食を食べる日本人を増やすにはどうすればよいか?
・トモノカイ市のごみ排出量を1/3にするにはどうすれば良いのか?
・スマホ依存症を直すにはどうすればよいか?
というような問いのことです。
こうした問いの特徴は、結論として“解決策やアイデアを発想して、提案する”ということ。つまり、問われたことに対して、いかに効果×実現可能性の高いアイデアを発想できるか、そして相手を納得させられる提案として伝えることができるかがカギとなります。
なお、アイデア提案型は、最後のアウトプットの形はプレゼンテーションを行うことが多いのも特徴です。学校によっては校内発表にとどまらず、役所や企業に出向いて、提案プレゼンを行うなどの実践を行っていることもあります。
2. テーマ研究型
もう一つのパターンは、問いが「WHY(なぜ)?」や「WHAT(なにを)?」など、「HOW?」以外の疑問に基づいているもので、トモノカイでは「テーマ研究型」と呼んでいます。
例えば、
・なぜ核廃棄物は無くならないのか?
・トモノカイ市のゴミ問題が深刻な理由は何か?
・なぜスマホ依存症になる高校生が多いのか?
・日本人のファストフード化による健康被害とは何か?
というような問いのこと。
この問いの場合は、現状をしっかりと調査もしくは実験した上で、問いに対する結論と根拠を論理的に述べていくことが求められます。大学などでアカデミックに研究していくタイプの問いとイメージしするとわかりやすいかもしれません。
また、テーマ研究型は、レポートや論文にまとめるケースが多いことも特徴といえるでしょう。学校によってはゼミ形式をとって、個別に先生方がアドバイスをしたり、大学機関と連携を取り、大学生や教授から直接アドバイスをもらうような工夫をしていることもあります。
問いのパターンによってプロセスが異なることを押さえておこう
探究活動には2種類あることがわかったところで、ぜひ押さえておいていただきたいのは、それぞれの探究のパターンによって、探究を進めるプロセスが異なるということ。
総合的な探究の時間では、生徒ひとりひとりに個別に問いを立てさせて、探究活動を進めるというスタイルをとっている学校も多いと思います。しかし、生徒ひとりひとり個別に問いを立てる形を取る場合、生徒は無邪気に問いを立てるので、多くの場合でアイデア提案型の問いとテーマ研究型の問いの両方が混在して出てきます。このとき、進めるプロセスが異なるにもかかわらず、タイプの異なる問いが混在したまま、同じように探究を進めようとすると先生も生徒も混乱する原因になりかねません。
では、パターンごとにどのように進め方が異なるのか、そしてどのようなことを意識して進めればよいのか、が気になるところだと思います。THINK TANQでは今後、パターンごとの進め方と指導のコツについても情報をまとめていく予定です。これらの情報が探究活動を進める上で参考になれば幸いです。
(執筆:神原洋子/トモノカイ)
記事公開日:2019年11月18日