Notice: Function _load_textdomain_just_in_time was called incorrectly. Translation loading for the wp-external-links domain was triggered too early. This is usually an indicator for some code in the plugin or theme running too early. Translations should be loaded at the init action or later. Please see Debugging in WordPress for more information. (This message was added in version 6.7.0.) in /home/ss139975/tankyu-skill.com/public_html/test/every/wp-includes/functions.php on line 6114
“ドキュメンタリー動画”から学ぶ社会課題で探究的な学習を | 日本探究部 powered by トモノカイ

“ドキュメンタリー動画”から学ぶ社会課題で探究的な学習を

★こんな先生方にオススメ★

・ドキュメンタリー動画を用いた探究的な学びについて興味がある先生方
・生徒が社会課題について考えるきっかけをつくりたい先生方
・教科横断的な探究学習が気になる先生方



東京都は白山に位置する京華中学・高等学校は、中高一貫の男子校です。
同校の和田達典先生は、中学生の理科の授業で、『ドキュメンタリーからはじめる探究ステップゼロ』を導入しました。本教材は以下のような構成になっており、5コマの授業で実践することを想定して制作されました。

本記事では、昨年11月に京華中学校で行われた『ドキュメンタリーからはじめる探究ステップゼロ』を用いた授業における、実践の様子をお伝えします。
また、同校で行われている探究的な学びについても伺い、和田先生の考え方や想いを取材しました。

ヤフー株式会社と協同制作をした探究教材『ドキュメンタリーからはじめる探究ステップゼロ』

ドキュメンタリー動画を用いた授業実践の様子

2限目で理科の授業が始まりました。
はじめは4名の取材班に興味津々だった生徒たちも、和田先生の授業開始の号令でガラッと集中モードに。前時の確認をしながら、授業に入ります。

京華中学校2年生、理科の授業の様子。


今回は、PHASE3で、生徒たちが選んだ動画のテーマごとに分かれて行うグループワークの回です。
PHASE1と2で、社会課題に触れてきたところから一歩進み、今回はそれをどう解決し、いかに「世の中をHAPPYにする」のかを考えていきます。

題材となるドキュメンタリー動画は、ジェンダーや人権、環境、労働など、様々な問題を取り扱っています。
生徒は、あらかじめそれぞれ自分が課題として考えたいと思った動画を選んでいました。
そして、同じ動画を選択した生徒でグループを組み、ワークに取り組み始めます。選んだ動画からグループを分けたため、人数には差が出ます。あらかじめグループ分けしてしまうより、生徒自身が興味を持った動画を探究できる環境が作れるので、より学びに積極的になりますね。

その後は、以下のような流れで進みました。

  1.  個々に感じた“違和感”をグループ内で共有する
  2.  解決したい課題を共有する
  3.  グループで解決したい課題を選ぶ
  4.  解決方法をグループで考える

それぞれについて、詳しくみていきます。

1.個々に感じた“違和感”をグループ内で共有する

探究的な学びの上で重要なのが“違和感”への気づきです。
「なぜ?」「どうして?」というような、純粋な違和感は、探究のスタート地点になるからです。
今回の授業では、生徒がそれぞれ見てきたドキュメンタリー動画に感じた違和感を、グループ内で共有していました。違和感を持つだけで終わるのではなく、それを言語化し、他者に伝えるプロセスを踏みます。
ここで特徴的だったのは、フレームワークを複数の端末で共有、同時編集できる「Jamboard」を活用したグループワークです。

京華中学校では、ICTを活用した授業が印象的だった。


生徒個人の違和感から「身近さ」「深刻さ」の二軸で問題を分類するワーク。

「テキストに書き込んで個人で作業することも大事だが、ディスカッションをしながら分析して1つの分析結果を作ってほしかった」という和田先生の考えから、端末上で取り組める「Jamboard」を用いることにしたといいます。

「Jamboard」を使うことの良さとしては、自分のグループ以外の分類も見ることができるという点です。他のグループがどんな違和感を抱き、どう分類しているのかが見えるので、新しい気づきや発見にもつながります。
また、全員がいつでも後から見直すことができるのも良い点の一つ。その後のワークにも活用しやすい上、振り返りをする際にも役立てやすくなります。

2. 解決したい課題を共有する

行った分類も踏まえて、自分がどんな課題を解決したいのかをグループ内で共有します。
それぞれが感じた違和感と、見えてきた解決したい課題。そしてその理由を、各々がしっかりと言語化していました。

グループで行われる活発な話し合いの様子。

限られた時間の中で自分の想いを共有するのは、なかなか難しいことですが、生徒がこれから生きていく上でも必要なスキルの一つです。

3.グループで解決したい課題を選ぶ

たくさん出た課題の中から、グループとして解決したいと考えたものを選びます。
「この課題を解決できれば、この違和感も解消できるよね」「やっぱり問題の根本はここだと思う」など、活発な議論が繰り広げられていました。
難しい問題にも目をそらさず、真正面からしっかり向き合う姿勢が素晴らしいです。

真剣にグループワークに取り組む様子。

4.解決方法をグループで考える

解決したい課題を決めたら、その解決方法を考えていきます。今回の授業では、残りの時間をグループごとの情報収集に費やし、解決方法の共有は次回としました。
選んだ課題に関する歴史や、日本と世界での比較、データ集計など、必要な情報をインターネットから収集します。必要な情報を自分たちで取捨選択し、手分けして行うことがどのグループも自然に出来ているのが印象的でした。

授業全体を通して特徴的だったのは、考える時間や、話し合う時間をたっぷりと取っているということです。
探究においては、生徒自身が考えて行動することが非常に重要であるため、能動的なワークには十分に時間をかけたいところです。
学校ごとの状況や他教科との兼ね合いもあるため難しいところではありますが、指導計画を考える際の参考にしてみてはいかがでしょうか。

『ドキュメンタリーからはじめる探究ステップゼロ』の導入を決めた和田達典先生。

本格的なドキュメンタリー動画が、生徒の社会課題認識に

和田先生が本教材を導入するに至った大きな理由は、「“ドキュメンタリー動画”で学べる」ことに魅力を感じたからでした。
背景としては、和田先生の授業内で取り組まれる課題研究の中で、生徒たちの温度感に差を感じたことがあるといいます。
「設定した課題や研究自体に興味が持てる生徒は、楽しんで課題研究に取り組める」とした上で、「研究に苦手意識を持つ生徒や、自分の興味に沿った課題が見つけられない生徒にとっては難しいものになっていた」というのです。

そこで和田先生がたどり着いたのは『ドキュメンタリーからはじめる探究ステップゼロ』でした。

YouTubeなど、動画コンテンツに慣れ親しんでいる中高生にとって、“動画”での学びは非常に相性が良いといえます。文章や写真だけの媒体よりも多様な情報を受け取れる動画という媒体は、視覚だけでなく聴覚にも刺激を与え、生徒の興味関心や違和感を見つける手助けになります。

探究の課題を集める一つの手段としても、動画という選択肢を加えてみるのは面白いかもしれません。

「Jamboard」と、教材を活用している様子。

また、「理科という教科の枠にとらわれず、社会課題を切り口にすることから始めることによって、生徒が当事者意識をもって学びはじめられるのではないか。そして理科の課題研究にもつながるのではないか」と考えたと言う和田先生。

本教材で使用しているのは、Yahoo! JAPAN クリエイターズプログラムの良質なドキュメンタリー動画です。プロの映像クリエイターたちが撮影・編集した本格的な動画から社会課題に触れることができます。

いわゆる社会課題と言われるごみ問題や、差別の問題などは身近にありながらも、普段の生活では意外と気づきにくいことでしょう。
ドキュメンタリー動画で具体的な事例を知ることで、社会課題は世界のどこかでなく、“日本で今、起こっている”ということに気づくきっかけとなります。

教科の枠にとらわれるのではなく、課題への「切り口」を意識してみると、また新たな観点での学びにつながるのではないでしょうか。

探究的な学びへの想い

京華中学校では、かねてより探究科が設定されており、1年生からゼミ形式で探究活動が行われています。生徒たちがテーマを決め、それぞれの担当教員のもとで探究が進められます。
成果物の発表の場ともなる探究科発表会では、生徒だけでなく、保護者の方も参加するため、様々な視点から評価をもらうことができるのが特徴的です。
今後、京華高等学校との接続も意識した探究的な学びに取り組んでいくという同校。
和田先生は二つのことを大切にしているようです。

どんな質問にも明確に答える和田達典先生。

まず一つは、「できるだけ生徒の疑問に答えられる場にする」ということ。
同校の探究においては、先生方がテーマを用意したり、与えたりすることよりも「自分で選ぶ」ということを大切にしているといいます。
生徒自身の興味や疑問を重視し、その答えを探すことが重要になっているのですね。

二つ目が、「“探究のサイクル”を何回も回す」ということ。
基本的な探究のサイクルは、一度回してみただけではなかなか身につかないでしょう。
だからこそ、探究の時間には何度も実践を繰り返し、生徒が一人でもサイクルを回せるようにしているといいます。

これから探究的な学びに本格的に取り組んでいくという先生方も、参考にしてみてはいかがでしょうか。

総括

京華中学校で行われた授業から、“動画”という視覚と聴覚に訴えかけるコンテンツをきっかけに、生徒たちの違和感への集中力が高まり、課題に対して真摯に向き合う姿勢が見られました。

特に社会課題は、文字だけではなかなか実態がつかみにくい傾向があります。
まさに自分たちの身近に起こっている問題だとしても、実感がしにくい事実は否めません。
そんな中で、本格的な動画から社会課題に触れることができるのは、中高生にとっても非常に身になる取り組みなのではないでしょうか。
また、社会に目を向けてみると、様々な問題があり、様々なコンテンツがあります。
どんな問題でも、探究的な学びのきっかけになりますし、どんなコンテンツからでも、生徒の学びにつながりうるでしょう。

決まった枠を定めるのではなく、色々な方法で、探究的な学びをリードしていくとよいのではないでしょうか。
※掲載内容は取材時点(2021年11月)のものです。

◇ ◇ ◇

今後も、探究的な学習においてお悩みの先生方のお役に立てるよう、様々な角度から取材を行い、事例を紹介してまいります。

<京華中学校にご導入いただいている教材>

『ドキュメンタリーからはじめる探究ステップゼロ』

本教材に関するご紹介ページはこちら

トモノカイの探究教材『一生使える探究のコツ』シリーズご紹介ページはこちら


>>>これまでの事例取材記事はこちらよりご覧いただけます!<<<


(執筆:佐瀬友香/トモノカイ)

関連記事