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「自分で学ぶことの楽しさ」に気づける探究を 学年に応じた多彩な取り組み | 日本探究部 powered by トモノカイ

「自分で学ぶことの楽しさ」に気づける探究を 学年に応じた多彩な取り組み

★こんな先生方にオススメ★

・地域と連携した探究活動に興味がある先生方
・探究的な学びを進路やキャリアにつなげたい先生方
・探究活動を、社会や生徒にとって役立つものにしたい先生


千葉県千葉市稲毛区に位置する敬愛学園高等学校では、独自の探究活動が行われています。

地域・企業と連携して課題を解決する取り組みや、進路指導に紐づいた取り組みなどを通じて、どれもが生徒自身が「自分で学ぶことの楽しさ」に気づけるようにと設計されています。

今回は、探究学習のカリキュラムの形成から携わるなど、同校の探究的な学びをリードする石脇淳先生にお話を伺いました。

11月に拝見した授業の様子もご紹介いたします。

トモノカイの取材に応じる石脇淳先生

「地域」「SDGs」「キャリア」 学年ごとのテーマ設定で楽しく学ぶ

敬愛学園高等学校の「総合的な探究の時間」のカリキュラムは、学年ごとに異なるテーマで構成されています。

まず1年生では、「身近な人をHAPPYに」をテーマとして、企業や地域と連携して課題解決を図る「Inage ImageⅠ」が行われます。後の章で詳しく取り上げますが、地域と連携した探究的な学びが特徴的です。

2年生では、「今生きている世の中を知る」をテーマとして、主にSDGsの観点から世界を知ることを図る「Inage ImageⅡ」が行われます。
授業内で活用されるトモノカイの教材『探究×SDGs』は、SDGsを観点とした学びのサポートをする役割を担っています。

敬愛学園高等学校における「総合的な探究の時間」での学び。 
出典:敬愛学園高等学校パンフレット


朝日新聞社と協同制作を行った『探究×SDGs “地域の課題”解決のコツ』

「普段の生活でもSDGsを意識する生徒が増えた」という石脇先生。

廊下には、生徒が作成したSDGsに関する学びを集めたポスターがずらりと並んでいました。

生徒が作成したポスター。SDGsと関連した学びが学校全体で展開されている。



3年生では、「卒業探究」として進路指導の一環として探究的な学びを進めていきます。
大学での専攻につながることを探究のテーマに選択することで、今後の希望進路を明確にしていくこともねらいの一つです。

それまでは、生徒にとっては漠然とした興味だったことが、探究のプロセスに乗せて思考を深めていくことで、学び自体への楽しさや喜びにつながることを目指しています。

「卒業探究」を行うからこそ、生徒が自分自身を知り、さらにはその学問分野に対して考えたり行動を起こしたりすることで、確かな自信をもって進路を決めていくという流れができているのです。

しかし、3年生になってから「自分の興味のあることって何だろう」と考え始めるのでは進路選択の時間が足りなくなってしまいます。

だからこそ、敬愛学園高等学校では、入学当初から「進路」を意識した探究学習が展開されています。
1年生のうちからオープンキャンパスへの参加を促したり、通年でのキャリアガイダンスを行ったりと、生徒が日頃から高校より先の学びについて考える機会がもたれています。

多くの生徒が、3年生に進級するころまでにはそれぞれの進路の方向性をほぼ固めることができているのも、そのためです。

学年ごとに異なるテーマをもって、段階的にステップアップしていく中で、「進路」への意識は共通していることがわかります。

また、学年によって異なるテーマで行われる探究的な学びは、様々な角度から「自分から学ぶことの楽しさ」を発見できそうです。

企業からのミッションを生徒が解決? 「Inage ImageⅠ」

前段でも触れた、1年生で行われる「Inage ImageⅠ」は、地域の協力団体が掲げた“ミッション”の解決策を、生徒たちがグループに分かれて探究的に考えていく活動です。

生徒たちは、与えられた“ミッション”のうち、解決したいと思うものを選び、同じ課題を解決するもの同士がグループに分かれます。
驚くべきは、学年全体でグループ分けをするという点です。

すなわち、クラスの壁を超えた活動になるため、初対面の生徒同士も協力しながらひとつの課題に向き合っていくということになります。

1年生のグループディスカッションの様子。
それぞれのグループが課題の解決に向けて積極的に意見を交換している。


「ビジネスの相手は初めて会う人がほとんどだから」と石脇先生は言います。
事実、社会人になってからは、自分と仲がいい人だけで話し合って解決することはそこまで多くありません。むしろ、社内でも全く話したことのない人に知識を借りる必要があったり、他社のソリューションを生かしたりすることが必要になってくるのです。

実際に社会に出てからも役立つような経験が、1年生のうちに、かつ探究的な学びの一環として行えるという点が、非常に画期的です。

現在では、数にして40組ほどの団体が協力をしているという「Inage ImageⅠ」。
学校外からも期待が厚く、地域全体で一丸となって、探究的な学びの機会を創出していることがうかがえます。

では、どのようにしたら地域や企業から協力を得られるのでしょうか。

敬愛学園高等学校の場合は、石脇先生が自ら企業や団体に協力を依頼しています。
依頼時には、「Inage ImageⅠ」の概要や目的がよくわかるような企画書も作成し、想いを余すところなく伝えることで、各団体からの理解や共感を得るといいます。

地域や企業からの協力を得るべく、石脇先生が自ら制作した企画書。


「Inage ImageⅠ」では、活動の途中段階で何度か協力団体が生徒に直接フィードバックを行います。
石脇先生は、そのフィードバックはあえて厳しめにお願いしているそうです。
実社会で働く社会人からの本格的な意見が、生徒の意欲を引き上げます。

最終的には、生徒たちが考えた課題解決案を発表しますが、実際に生徒の考えた解決策を取り入れた企業もあるほどに、生徒自身も協力団体も本気です。

探究的に課題を解決する力を身につけながら、地域や企業など、だれかの役に立っている。
学校外と協力した探究活動の事例としては、非常に参考になるのではないでしょうか。

全学年同時に行われる「総合的な探究の時間」

ここからは、敬愛学園高等学校の「総合的な探究の時間」の様子をお伝えします。

筆者が訪れた際は、それぞれの学年で、以下のように授業が展開されていました。

1年生授業

1年生は、「Inage Image Ⅰ」におけるグループワークでした。
グループごとの進め方で、話し合いは進みます。
1年生とは思えないほど、議論が活発なグループもあり、どんな解決策を提案していくのかが楽しみです。

2年生授業

『探究×SDGs “地域の課題”解決のコツ』を用いた授業の様子。
教材に合わせて先生が作成したスライドも用いられている。


2年生は、『探究×SDGs』を用いて、地域の課題の解決策を考えるという授業でした。
敬愛学園高等学校は稲毛区にありますが、通っている生徒の住む地域は様々であり、その分、各地域が抱える問題も多様です。
稲毛区以外の地域、もしくは自分の住んでいる地域の課題を解決していくということで、1年生の「Inage Image Ⅰ」で身についた考え方も応用できています。

3年生授業

「校則」について探究している生徒の発表の様子。
身近なところからテーマを見つけられており素晴らしい。発表者も、聞き手も、それぞれ真剣。



3年生は、自分で定めたテーマを探究し、発表していました。
発表に用いる資料にも生徒それぞれのこだわりがあり、例えば問いかけをするなど、聞き手を引き込む工夫もされていました。

こうして「自分の言葉をいかに相手に伝えるか」というゴールに向かって手法を考えることも、まさに探究といえます。

敬愛学園高等学校における探究的な学びをリードする石脇先生は、地方での研修を受講したり、大学教授から知見を得たりするなどして、探究に関する情報を色々な場所から集めている。



同校における「総合的な探究の時間」で特徴的なのは、全学年が同じ時間に授業を実施するということ。
「全学年同じ時間に設定すると、学年を越えた探究活動にも取り組みやすいのが良い。」と、石脇先生は言います。

たとえば、3年生の「卒業探究」では、2年生に向けて発表する機会を設けています。
発表者である3年生は、普段とは違った環境での発表にほどよい緊張感をもって臨むことができます。
対して、聴衆である2年生は、来年自分たちがやることへの事前準備、あるいはお手本として発表を聞くので、自分の学年が上がったときの参考になります。

実際に、学年を超えた学びの場を提供することが、双方にとって良い刺激や影響になっていることがわかりますね。

委員会+「オリジナルブック」で先生同士の意識合わせを

敬愛学園高等学校における探究的な学びへの意識合わせは、探究委員会で行われています。
各学年から2名ずつの先生に加え、進路指導の先生も含めて構成された同委員会。

意識合わせの場としてはもちろんのこと、各学年における探究学習の進捗報告や課題点の共有も行われています。
学年を超えた先生での組成ということもあり、それぞれの知識や経験から、問題点の解決を図ることができます。

トモノカイも特別に同席させていただいた、敬愛学園高等学校の探究委員会の様子。
各学年における探究学習の進捗状況や課題点を共有する場となっている。


敬愛学園高等学校における探究的な学びをサポートする存在として、大きな役割を果たしているのが『敬天愛人への歩み』です。

『敬天愛人への歩み』とは、先生方が自分で作成していたワークシートや学級だよりなどを、各学年1冊にまとめて印刷、製本した、これまでの知見がつまっている敬愛学園高等学校オリジナルの教材集です。

授業の都度、ワークシートを作成するのではなく、オリジナルブックの中から適するシートを選べばいいため、先生方への負担の軽減にもつながっています。

また、オリジナルブックという存在が、探究における共通認識にもつながるため、ばらつきやすい先生同士の意識合わせにも役立っているといいます。

『敬天愛人への歩み』は、各学年のイメージカラーで展開。
ワークシートや進路指導に用いるシート、期末テストの計画表など様々な内容を収載。


『敬天愛人への歩み』をはじめ、しっかりと先生方で意識を合わせていく体制が整う同校。
これこそが、学校全体で探究的な学びを推進していく大きな支えとなっているといえるでしょう。

総括

敬愛学園高等学校で行われる探究学習の多様さには、「“総合的な探究の時間”での学びを通じて、“自分で学ぶことの楽しさ”に気づかせたい」という石脇先生の想いが表れていました。

根底にある軸は同じでも、様々に学びを展開できるのは探究学習の面白いところです。

探究の活動が地域課題の解決や進路指導の一環となっているからこそ、生徒自身が自分の将来について真剣に考えられるようになるのでしょう。

「総合的な探究の時間」は、国語や数学などのいわゆる「教科」と比べると、その意義や重要性が見えにくくなりがちです。
しかしながら、同校のように意義のある具体的な取り組みがあると、先生、生徒、地域など、周りの理解をも得た探究的な学びに期待ができます。

今後、高校からその先の進路を見据えて、学校それぞれの探究における意義を設定することが求められるでしょう。
本記事の敬愛学園高等学校の例も、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

◇ ◇ ◇

今後も、探究的な学習においてお悩みの先生方のお役に立てるよう、様々な角度から取材を行い、事例を紹介して参ります。

<敬愛学園高等学校に使用していただいている教材>

『探究×SDGs “地域の課題”解決のコツ』

トモノカイの探究教材『一生使える探究のコツ』シリーズご紹介ページはこちら


>>>これまでの事例取材記事はこちらよりご覧いただけます!<<<


(執筆:佐瀬友香/トモノカイ)

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