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探究を大学への学びにつなげるーー大学で学びたい学問を考える実践女子大学主催のワークショップ「探究パスポート 2024」を体験レポート | 日本探究部 powered by トモノカイ

探究を大学への学びにつなげるーー大学で学びたい学問を考える実践女子大学主催のワークショップ「探究パスポート 2024」を体験レポート

高校で行ってきた「探究学習」を入試で活用するための「探究パスポート 2024」が2024年5月6日、実践女子大学日野キャンパス(東京都日野市)で開催されました。高校3年生を対象に、自身が行った探究学習のテーマから、大学で学びたい学問や将来についてワークショップ形式で考えていくイベントです。

本記事では、イベント当日の様子をレポート。グループワークや大学教授による講座、ワークシートの作成など、探究と大学での学びとを参加者がつなげていくアプローチをご紹介していきます。後半では、本イベントの担当者のインタビューを掲載します。

3つのプログラムで構成

当日は、首都圏をはじめ全国各地の高校生が会場の実践女子大学日野キャンパスにやってきました。参加者は受付を済ませると、3つの講義室に分かれました。保護者と一緒に参加する生徒も多く見られ、参加者の進学への意欲が伝わってきます。

実践女子大学職員からイベントの流れの説明を受ける参加者
後方では保護者も真剣に見学

イベントは3つのプログラムで構成されています。参加者が自分の興味を見つけるための「スタートグループワーク」から始まり、大学生と教授がそれぞれの専攻する学問から大学での学びや活動を講義する「学問・領域を知るセッション」、講義を経て自分の将来を考える「まとめグループワーク」へと進んでいく流れです。
配布されるワークシートは各プログラムの内容に対応しており、シートに書き込んでいくことで、全てのプログラムを受講し終わると、総合型選抜・学校推薦入試で必要となる「志望理由」のアウトラインが完成するようになっています。

イベントスケジュール(参加者が使用するワークシートより抜粋)

探究と入試の関連を学ぶ「スタートグループワーク」

本イベントのテーマでもある「高校で行ってきた『探究学習』を入試に活かすこと」についてトモノカイのスタッフが講師を務めました。
実践女子大学でも導入されている「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」が、近年入試方式として増えてきている社会的背景をはじめ、大学が求める人物像、入試と高校での探究活動の関連性などを、スライドで示しながら説明していきました。
総合型選抜 ・学校推薦型選抜といった入試方式では必ず「志望理由」について聞かれます。志望理由で自分を語ることができるかが、これらの入試方式に対応するためのポイントとなります。
そこで、本ワークの序盤では、実践女子大学の過去のエントリーシートを事例にしながら、志望理由を書くうえで必要な要素とはなにかを解説していきました。

参加者たちは解説を聞いた後、実際にワークシートを用いて現在の自分を見つめ直していきます。
高校での探究活動やこれまで印象に残った経験など過去を振り返り、今の自分がどんなことに興味関心があるかを紐解いていきます。
すらすらとワークシートを埋めていく生徒もいれば、あらためて問われることでじっくりと考えを巡らせている生徒など反応はさまざま。手が止まっている生徒には、イベントの運営サポートの大学メンターたちが声掛けを行う場面も見られました。

ワークの最後では、講師が例題として「ゴミ問題」を取り上げ、一つのテーマでもどこに着目するかでさまざまな切り口があり、学問によって多様な展開へとつながっていくことを説明しました。

そして、次のプログラム「学問・領域を知るセッション」では、選択した学問領域ではどこに着目しているのか、自分なりに考えながら受講することを促しました。

資料の一部

大学教授の講義を体験!自分の興味を再確認

参加者は、実践女子大学の学部に基づき、6つのカテゴリ(#国際・言語・文化、#環境、#デザイン、#こども・教育、#栄養・食物、#心理・メディア・社会)、計11の講座から興味のあるものを2つ選んで受講します。

「女性大統領はいつ誕生する?-アメリカ社会のなかの女性」「アートと社会をつなぐデザイン」「食べ物と健康の学び入門」などテーマは多岐にわたります。実践女子大学での学びをより具体的に想像できるように講座が設計されています。

講座の種類(一部)
※イベント告知ページより抜粋

セッションの冒頭では、実践女子大学の在学生が実際に入試の際に書いた志望理由を紹介しました。なぜその学問を学ぶことを志望したのか、高校時代までの体験を挙げながら志望理由の書き方を解説していきます。参加者たちにとって大学生は年齢も近く、身近なロールモデルともいえます。実際の入試で提出した志望理由だからこそ、解説にも説得力があり、参加者たちはメモを取りながら興味深く大学生の話を聞いていました。

現役大学生による実際の「志望理由」紹介

続いて、参加者各自が選択した講座に移ります。それぞれの学問においてどのようなことを学ぶのか、各学科・専攻ではどのような活動を行っているのかを事例を用いて解説する講座もあれば、模擬授業を行う講座もあり、いずれも学問への興味、理解を深めるために工夫が凝らされていました。

大学教授による学問解説の様子

参加者たちは、教授による講義を聞きながら適宜ワークシートにメモをしていきます。ワークシートには「スタートグループワーク」の最後で解説があった「ものの見方・考え方」を記入する欄があります。受講した講座は、どこ(どんな部分)に着目しているのか、どのように物事をみているのかを記入していきました。

探究的アプローチで「志望理由」が完成

講座受講後は、再び元の会場に集まり、グループワークが始まります。トモノカイ講師の進行に沿って、学問領域の話を聞いて感じたことを基に、大学でやってみたいことを考えていきます。興味を持った講座からどんなことに共感したり、新しい気づきを得たりしたかをワークシートに記入します。具体的にやってみたい活動や体験したいことを書くことで、より入学後の具体的なイメージを膨らませていきます。

ワークの最終仕上げは、講座で学んだ学問領域のものの見方・考え方を基に、新たに浮かんだ疑問・課題、その解決策や提案はあるのか、を考えていきます。興味を持ったことから、疑問や課題を洗い出し、解決策などを探っていくという、まさに探究的なアプローチで考えを整理していきました。

参加者たちは一日のイベントを振り返りながらワークシートを記入していきます。なかなかワークシートに着手できない参加者には、講師や運営サポートの大学生メンターが声をかけ、参加者の感じたことを言語化する整理のお手伝いをしていました。

こうしたワークシートを埋めていく過程を通して、最終的に各自の「志望理由」のアウトラインが完成しました。

近くにいる生徒同士で感想を共有する参加者や、終了時間ギリギリまで懸命に考えて記入する参加者もおり、各自がそれぞれの形で一日の振り返りを行っていました。 参加者それぞれが、今までの生活や学びを通して興味をもっていたことと、これから大学で学べることとが各プログラムを通して接続されていく一日となりました。

実践女子大イベント担当者にお話しを伺いました

今回のイベントを担当した実践女子大学入学サポート部の奥田亜紀さんに、イベントの狙い、参加者の反応などについてお話を伺いました。

実践女子大学 入学サポート部 奥田亜紀さん

「探究パスポート 2024」は、実践女子大学の創立125周年 記念特別事業として企画されました。
奥田さんは「高校での探究学習の必修化や、大学の選抜方式の多様化など、大学入試を取り巻く環境はここ数年で大きく変わっています」と打ち明けます。

奥田さん:「特に、一般入試よりも、総合型選抜などの年内入試をターゲットにしている受験生のニーズにどう応えていくのか。本学も年内入試には重きを置いていますので、こうした受験生に興味を持って参加していただくためには、どのようなイベントが良いかを考えました。」

探究を入試に活かしたいという受験生のニーズも大きいといいます。

奥田さん:「高校でしっかりと取り組んだ探究の成果を入試に活かしたいという受験生は少なくないのですが、それを大学入試向けに作り替えるという作業に、受験生も高校の先生も苦労しているようです。そのチューニングのお手伝いをすることで、本学を知っていただくきっかけにもなればという思いが、今回のイベント開催の背景にもあります。」

参加者からは「ワークショップで志望理由書のイメージが固まった」「志望理由のワークシートを書くことで自分の考えを深掘りできた」など満足度の高い意見が多く寄せられています。

奥田さん:「ゼロから組み立てた新しいイベントではあったので、無事に終えることができてまずはほっとしています。参加者アンケートを見ても、実際の志望理由書をどう組み立てていけばいいのかをワークショップを通して知ることができた点が評価されているようです。実際の大学の講義の雰囲気も体験できたし、自分が理由書を書くときにどうしたらいいのかというヒントも得られたのが良かった、という声を多くいただいています。」

先輩である大学生が、実際に入試で提出した志望理由書を基に解説するプログラムも評価されたようです。参加者からは「実際に提出された志望理由を見たことで、どのようなことを書くべきかが分かった」「先輩の解説で、どの学部で何を学ぶのかを調べて理解した上で志望理由を書くと良いというアドバイスがあって参考になった」などの意見がありました。

奥田さんは、保護者の積極的な姿勢も印象に残ったといいます。「一般的なオープンキャンパスも保護者同伴での参加はありますが、今回は、保護者の方が参加に積極的な印象を受けました」総合型選抜や探究を活かした入試への保護者の関心の高さがうかがえます。

奥田さんは年内入試について「各大学が入試に独自性を出すという流れの中で、より本学を強く志望してくれている受験生に入学してほしい」と話します。「本学は『実践』という名前の通り、社会に出たときに役立つ力を在学中から身につけていくために、さまざまな企業と連携した授業を展開しています。グループワークや成果発表などを通じて、企業からフィードバックをもらったり、学科横断型の授業もあったりする点は、他の大学にはない魅力だと思います。参加する学生もどんどん増えていて、こうした授業を受けたいといって入学してくる学生もいるほどです。」

オープンキャンパスなどのイベントを通して、これからも大学の魅力を広く伝えていきたいといいます。

奥田さん:「積極的に社会活動に取り組んで外部と協働していきたいという意欲のある高校生にぜひ本学を知ってもらいたいです。本学の学生を見ていると、初めからグループワークや人前で話すのが得意な子ばかりではありません。でも、実践を重ねていくことで、意見を出せるようになったり、リーダーシップを発揮できるようになったりしていきます。まずは何かをやってみたい、チャレンジして自分も成長していきたいという思いを持っている子にとって、本学はいろいろな機会を提供できると思います。私にもできるかな、やってみたいな、という内に秘めている意欲に、入学後にうまく火がついていく環境が整っていますので、ぜひ本学を通して成長してもらえればと思います。」

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