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授業実践で見えた“場づくり”の重要性と教材活用の意味 | 日本探究部 powered by トモノカイ

授業実践で見えた“場づくり”の重要性と教材活用の意味

★こんな先生方にオススメ★

・中学での実践事例を知りたい方
・国語を探究的な学びにする方法を知りたい方
・生徒が書く論文の内容の浅さが気になっている方

前回、東京都北区にある聖学院中学校・高等学校の伊藤豊先生に、“探究力”を生徒に身につけさせるコツをお聞きしました。
“探究力”を身につけさせるには?キーワードは“段階的”な学習!(記事URL) そこで「実際の現場をご紹介した方がより先生方にとってもイメージがつかみやすくなるのではないか?」と考えたトモノカイは、改めて授業の様子を取材させていただきました。
今回は『一生使える探究のコツ~思考の手引き~』を使用した、中学一年生の国語2の時間にお邪魔したレポート記事です。 伊藤先生から探究に取り組む先生方へのアドバイスも頂きましたので、ぜひ最後までお読みになり、探究的な活動へお役立て下さい。

授業見学編! 探究的な学習の現場はどんな様子?

日直の快活な挨拶で始まった授業は、早速lesson3「論理的なおかしさを見抜く」ところから始まりました。

黒板に映し出されたのは、教科書に合わせ伊藤先生が作ったスライドです。
このように授業のスタイルに合わせて独自に作っておられる先生もいらっしゃいますが、板書や教材に加え、スライド資料があると授業進行にメリハリが生まれます。

※弊社教材には、各lessonに対応したオリジナルのスライドも特典としてお付けしております。授業時のサポートとして、教材利用にお役立ていただけます。

探究教材『一生使える探究のコツ 思考の手引き~整理・分析編~』に合わせて作られたオリジナルスライドを用いて
探究の授業をする伊東豊先生


「しつこくすると飽きてしまうから」と、テンポよく進められる授業には、生徒たちの積極的な参加がみられます。
問いかけにはすぐに手が挙がり、発表もさかんで、活気がありました。

コロナ禍ということで、机を動かしてまでのグループワークは難しくなっていますが、周辺の生徒で話し合うことで、しっかりアウトプットの機会もとることができていました。

周辺の生徒同士で議論する様子。所々で議論が白熱していた。


今回は45分間の授業の中で、“教科書に沿ったワーク→話し合い→発表”という流れが数度あり、最後の10分程度で、ワークシートを記入させ、提出させるという構成でした。

時間配分については、「きっちりと決め切っているわけではない」と伊藤先生。
発表が思ったより盛り上がってしまう場合もあるといいますが、それはそれで良しとし、むしろ「発表する」という貴重な時間を大事にしているとのことでした。

また、今回のワークシートは、伊藤先生が授業に合わせて作成したものです。
ここでは、本lessonで学ぶポイントだった「前提が間違っている」または「前提が抜けてしまっている」話を生徒自身の視点で書くことがねらいになっています。

“途中乗車”できる授業

伊藤先生は授業を進めていくにあたって、「途中下車してしまってもまた乗車できる」よう意識しているとのこと。
途中でついて来られなくなってしまう生徒や、話を聞いておらず次に何をすべきか分からない生徒のために、「今何をすべきかがすぐ分かる」ように工夫しているといいます。

その意味では、授業中に生徒たちに指示を出す際も、“段階的”であったこともポイントといえそうです。
伊藤先生の指示は、ただ一回きり「問題を解け」というようなことは一度もありません。
「違和感があると思う箇所に線を引きなさい」「なぜ違和感があるのか議論しなさい」「発表してみましょう」というように、段階を踏んだ指示をしていたのです。
明らかに生徒もついていきやすい様子が感じられました。

また、活発で積極的な発表姿勢についてですが、これには普段からの「間違えてもいい雰囲気作り」が大いに効果を表しています。
グループで議論や発言が活発化するには「間違いをみんなの前で否定してしまうことで生徒が傷ついてしまうかもしれない」ということを念頭に置きながら、とはいえなんでも褒めるのではなく、むしろ違うことには違うといえる空間が必要です。

この雰囲気づくりにおいて、伊藤先生は「威張らない」ようにしているとのこと。
ベテランの先生方は特に、生徒との距離感が遠くなってしまいがちなので、間違えてもいいと思えるような「心理的安全性」の担保は重要な点です。

逆に若手の先生方は、威張らず距離感を近づけすぎると、授業進行に支障がでる場合もありますので注意が必要です。
適度な距離感は大切にしつつも、安心して間違えられる環境づくりへの意識というのは、探究的な学習の時間に限らず、大切な点ですね。


ワークの議論の様子。周辺の生徒が遠い場合は席を立ち、意見を交換している。


ワーク中心の教材で楽しく探究的な学習を!

実際に授業を見学する中で筆者の印象に残ったのは、生徒が「楽しんでいる」ということです。
積極的な発言や、活発に交わされる話し合い、真剣にワークに取り組む姿勢から、純粋に学習を楽しむ様子が伝わりました。

探究的な学習を教材で行うと、どうしても“お勉強感”が出てしまうのではないかと心配する方もおられますが、弊社の教材はワークが中心のアクティブな内容!
中高生が楽しみながら学べる仕様になっています。

また先生方の工夫も取り入れやすいよう、内容にも余白がありますので、先生方のカスタマイズ次第で授業の幅が広がります。

今後どう進めていく? 学校や先生方に向けたアドバイスとは

ここまで、聖学院における探究的な学習を二つの記事にわたり紹介してきました。

あとは実践あるのみ! というところですが。
実際に探究的な活動を進めていくとなると、まだ不安が残ってしまう方も多いのではないでしょうか。

そこで、取材に答えて下さった伊藤先生に、いくつかアドバイスを頂くことができたので、ご紹介します。

探究教材『一生使える探究のコツ 思考の手引き~整理・分析編~』を笑顔で開く伊藤豊先生

1.教科書は使った方がよい

伊藤先生にアドバイスを乞うた際、真っ先に頂いたアドバイスが「探究の教科書は使った方が良い!」というものでした。
実際に探究的な学習をオリジナルの教材で独自に行っている学校もありますが、ただでさえ忙しい教員のさらなる負担になっていることは事実です。

また、探究そのものが新しい分野であるがゆえ、そもそもどうすればいいのかもよく分からないまま授業を進めている先生方も中にはいるようです。
そこに教科書があれば、先生方も体感的に探究的な考え方を学びながら、授業を進めることができます。

ただここで重要なのが「教科書だけで完結しない」ということです。
前編でも少し触れましたが、重要なのは「いかに日常に活かせるか」。
教科書を単に導入するだけでなく、その内容を生徒たちの日常に転じてあげるよう意識するとよいでしょう。

宿題を出す際も、いかに日常と結びつけられているかは一つのポイントとなります。
教科書のワークを解くこと自体を宿題にするのもいいですが、慣れてきたらオリジナルで日常に紐付いた問題などを与えてあげられるといいですね。

2.トライ&エラーを繰り返しながら、とにかく継続する

探究はもちろん、他の教科の指導においても「絶対の正解」は存在しません。
だからこそ、色々とやってみていいのです。

皆様も一度、振り返ってみて下さい。
トライ&エラーを繰り返して学べたことの方が、レクチャーされたものよりも学びになったという経験はありませんか?

これは探究的な学習を進める上でも当てはまることです。
とにかくやってみる。やってみて上手くいかなければ、また直せばいいのです。

これには、学校自体がトライしやすい環境であることも重要です。
やったことのない新しいこと、前例の乏しいことに挑戦することはとても勇気がいりますが、やってみてから分かることが多いのもまた事実。

挑戦に寛容な場作りをしていきたいものですね。

もちろん、時間はかかってしまうでしょう。
何事にも言えますが、特に探究的な活動は一朝一夕で成り立つものではありません。
だからこそ、「直ぐにやめないで続けてみること」が大事だと伊藤先生はいいます。

とにかく失敗しながらでも、まずは続けてみて、その中で先生方や学校の最適な方法を探していきましょう。

探究教材『一生使える探究のコツ 思考の手引き~整理・分析編~』用いて授業を行う伊東豊先生と生徒の様子。


3.評価は「“コア”な部分から離れない」

探究的な学習における評価に関して、悩まれる方が多くおられます。
そのお悩みの種類も、どのように評価をしていくか、先生方の間でどう統一するか、など多岐にわたります。

その上で伊藤先生はまず「成果物や質を評価する“観点”が必要になる」と言います。
探究における評価基準がまだしっかりと定まっていない段階であるからこそ、観点を学校で統一することで先生方でのばらつきも抑えることができます。

と同時に、全体で共通した評価の観点をもっていることで、一人に対する負担を軽減することもできます。
やはりまずは教員全体で、探究的な学習における成果物や質の評価の観点を共通認識を持てるようにすることが大切といえます。

なお聖学院でも現在、評価に関するルーブリックを作成しながら、学校全体での探究的な学習における評価体制を整えているとのことでした。

これら評価に関する体制を整えていくにあたり「学んで欲しい“コア”な部分から離れない」という伊藤先生の考え方は、多くの先生方が参考にできる点ではないでしょうか。
どんな教科に対する評価でも、学んで欲しい“コア”な部分を常に意識することで、評価の付け方や在り方がぐっと考えやすくなるはずです。

ちなみに今回お邪魔した授業で用いられたワークシートへの評価は、「お題通りに自分のエピソードを書けているか」という観点になります。
成績には反映しないとのことでしたが、中でも面白かったものは優秀賞として発表するとのことで、生徒も楽しみながらワークシートを記入していました。

4.外部の力を活用する

学校内だけでなく、時には外部の力を活用するのも、探究的な学習を進める上では重要な点と言えます。

たとえば聖学院では、探究的な学習における意識合わせや、プログラム企画をするにあたり、IT技術者の力を借りたといいます。
主にファシリテーターのような役割を務めてもらいながら、議論を進めたようです。

伊藤先生によると、外部の視点が入ることにより、学校全体での理解が深まっただけでなく、先生方同士で話すよりも素直に意見を出し合えたとのことでした。また、学校内だけでは得ることが難しい専門的な知識がもとになった探究的な学習も考案できうるなど、可能性が広がります。

加えて聖学院では、先生方が外部研修にも積極的に参加しているとのことでした。

特に次世代を担う立場にある先生方を中心に、積極的に外部研修に参加させることによって、知識を学校に還元できるだけでなく、次世代リーダーの育成にもなります。
そのため聖学院には外部研修のチームが存在し、次世代を担う先生方が様々な外部研修に赴けるような体制が整えられています。

外部研修に積極的に参加することで、「コネクション」ができるのもメリットです。
外部からの視点になりうる講師や専門家とのつながりはもちろん、同じような場面で行き詰まる学校とも交流することができます。

現在はコロナ禍であり、オンライン開催のセミナーも多くあるため、従来では考えられなかったような離れた地との交流も可能になりました。

効果的に外部の力を活用することで、探究的な学習をさらに一歩進められそうです。

総括

本記事では、聖学院で行われている探究的な学習の様子や、その上で頂いたアドバイスなどを紹介してきました。
前編では“探究力”を段階的に育てるノウハウをテーマにしておりましたが、後編にあたる本記事では、さらに実践的な取り組みがテーマになっております。

探究的な学習が求められる中、「何から始めていいか分からない」「教科書を導入したいけれど迷っている」など、先生方のお悩みは多岐にわたっています。
そんな皆様のお悩みに対して、本記事が少しでもお役に立てましたら幸いです。

今後も様々な取材を行い、学校における探究を多様な角度でお伝えして参ります。

◇ ◇ ◇

<聖学院中学校・高等学校でご活用いただいている教材>

一生使える探究のコツ 思考の手引き~整理・分析編~(教材ご案内ページ)


>>>これまでの事例取材記事はこちらよりご覧いただけます!<<<


(執筆:佐瀬友香/トモノカイ)

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