
(以下、河合塾発行 2019年4・5月号「ガイドライン」の掲載記事を記載)
次期学習指導要領に向け、探究活動に力を入れる高校が増えているが、これまであまり取り組んでこなかった高校では「どんなテーマに取り組めばよいかわからない」、既に実践を重ねている高校でも「生徒が問いを立てられない」「レポートやプレゼンテーションの内容が深まらない」など、先生方からはさまざまな課題が聞かれる。そこで、近年は企業やNPO法人などが、高校における探究学習を支援する教材の開発を進めている。
ここでは、國學院大學・田村学教授の監修の下、株式会社トモノカイが開発した『一生使える探究のコツ』を紹介する。テキストは、頭の筋トレを行う『思考の手引き』と探究活動の練習を行う『実践の手引き』の2種類あり、『実践の手引き』は基礎編と応用編に分かれている。また教師用指導解説書も用意されている。
活動内容・目指したい難易度から探究活動を組み立てる
『一生使える探究のコツ』では、(1)活動内容と(2)目指したい難易度の2点から、探究活動の計画を立てていくと良いとしている。
(1)活動内容
活動内容については、「探究の型」「テーマ」「表現方法」の3つの切り口から捉えている。
例えば、大学で学びたい学問分野について論文を書くといった探究活動であれば、「探究の型:テーマ研究型」×「テーマ:自分の興味関心」×「表現方法:レポート論文」、自分たちの住む地域の課題の解決策を提案し人前で発表するといった探究活動であれば、「探究の型:アイデア提案型」×「テーマ:地域課題」×「表現方法:プレゼンテーション」といった組み合わせとなる。

(2)難易度
難易度については、「課題設定のレベル」と、「アウトプットのレベル」の2つの切り口から考える。
「課題設定」については、「与えられた課題で探究プロセスを回す」と「自ら設定した課題で探究のプロセスを回す」の2つのレベル、「アウトプット」については「調査・報告」「論証/根拠を伴った企画提案」の2つのレベルからなる。
探究活動では、最終的には生徒が自ら設定した課題について探究することを目指したいが、課題設定は大人でも難しい。また、質の良い課題に取り組まなければ、探究活動において学びが深まらない。そのため、まずは与えられた課題で「探究プロセスの基礎」を学んだ上で、自ら設定した課題を追究するといったように、段階を経て取り組むことが肝要である。
アウトプットについても、生徒の発達段階に応じて目標を設定する必要がある。そこで、『一生使える探究のコツ』では、探究活動の難易度を「Hop」「Step」「Jump」の3段階に分け、「Hop」「Step」については『実践の手引き~基礎編~』(22~30コマ前後)、「Jump」については『実践の手引き~応用編~』にて、学習できるようにしている。

さらに、情報を構造化する力、多面的に考える力、仮説検証する力など、探究活動を深める上で必要な思考スキルを高めるために、『思考の手引き』(10コマ)というテキストも提供している。『思考の手引き』を学んだ上で『実践の手引き』に進む、『思考の手引き』と『実践の手引き』を並行する、一部のテキストのみを扱うなど、各学校の状況に応じて活用できる。
開発担当者の神原洋子さんは、「実際にご導入いただいた学校をみると、探究活動を新たに始めた学校、学習指導要領改訂をきっかけにこれまでの探究活動の内容を見直している高校など、さまざまです。『一生使える探究のコツ』は、各学校の取り組みの状況や、 育てたい生徒像や育成したい資質・能力などに応じて、柔軟に使っていただければと考えています」と語る。