できる限り、ご要望に沿えればと思い、この度、山形の学校様からご依頼を受け、探究についての教員研修を実施してきました。
全教職員対象ということで、40名規模での実施です。
ということで、今回は教員研修に関するレポートをお伝えします!
教員研修の実施に至った背景とその内容
今回ご依頼を受けた学校様は、今後、探究活動を学校の活動の軸に据えて、改革を推進していきたい、という想いを持ってらっしゃる学校様でした。
一方で、各教員の探究に関する認識はバラバラ…意義をいまいち理解できない、探究活動が一体何なのかよくわからない、何から手をつければいいのか、わからない…など様々な先生がいろいろな状況を抱えられていました。
この状況の中、まずは探究の意義を理解してもらうこと、及び探究に取り組む上での心理的ハードルを下げたい、というご要望を承りました。
頂いた時間数は、2時間。
そこで、ご担当の先生と話し合った結果、以下の内容で研修を実施することにしました。
① 探究活動を行う意義を知る(講義)
② 探究活動をプチ実践してみる(ワークショップ)
③ 生徒との関わり方で押さえておきたいポイントを知る(講義)
教員研修、スタート
全教職員で実施するということで、続々と先生方が教室に集まってきます。
14時きっかり、校長先生のお言葉を皮切りに、研修スタート!
まずは今回の講師を務める、教材制作者の神原からご挨拶。そして本日の目的を伝えます。
「本日の目的は、探究活動とは何なのかがわかり、進めるにあたって、どのようなことを意識していけばいいかがわかることです。」
そのために、上記①~③について、講義とワークショップで進めていくことを伝えました。
①探究活動を行う意義を知る
まずは、探究活動を行う意義について、説明をしていきました。

歴史を振り返ってみると、戦後から80年代までは、工業化社会を中心として社会が経済発展してきました。この時に必要だった人材は、工場で活躍できる人材…すなわち、指示やマニュアルを的確にこなせる人であり、必要な力はコピー力や暗記力でした。
これが今も根強く残っている旧来型の教育につながっています。
一方で、90年代以降バブルが崩壊し、インターネットが普及、グローバル化が進み、海外に行くこともやり取りすることも容易になりました。さらに環境問題などの社会的な課題も深刻化。ここ10~20年で半分の仕事がなくなる、という予測も出ていたりと、社会の変化のスピードが一気に加速しており、もはや専門家ですら、3年先が予測できないという時代になってきています。この時代に必要な力とは何なのでしょうか?それは、予測のつかない事態へ対応できる人材であり、未知のことにも人と協働しながら、クリエイティブな発想で、乗り切っていく力が必要と言えるのではないでしょうか。
すなわち、このような時代背景からも、育てていくべき力は変化しており、学び方も変化させていく必要があるといえるでしょう。

ここで、現時点でも、すでに旧来の学校教育と現実の大人の社会で求められることに、すでにギャップが生まれています。上記の図をご覧ください。おそらく皆さんが働いている環境で、旧来の学校教育における試験のような仕事の仕方をしている方は、いないのではないでしょうか。そう、実は学校でかしこいとされる力と現実の社会でのかしこさには、すでに今の時点でギャップが生まれているということです。
ゆえに探究的に学ぶこととは、より現実の社会でも活きる力を身に付けていく学び方に変えていこうよ、ということを意味しています。

このような事態をふまえて、今回、戦後70年来の大きな教育改革が動いています。
大学入試改革を皮切りに、幼・小・中・高校での学習指導要領が「探究的な学び」に軸足をおいた形で変更になり、それと併せて、大学にも学び方の変革が求められています。
すなわち、三位一体での改革が現在動いているのが今なのです。

それを踏まえて、改めて今回の新学習指導要領について、おさらいしておきましょう。
今回の新学習指導要領のポイントは、簡単にお伝えすると『カリキュラムマネジメント×探究』です。
学校ごとに、目指したい生徒像を明確にして、その生徒像に向けて、育みたい力を具体的に設定する。そして、その育みたい力を身に付けられるように、各教科での学び方を探究的な学び方に変え、行事やクラス活動などと連携しながら、総合的な探究の時間を中核に据えて、学校全体での学びを有機的につなげていこう、すなわちカリキュラムマネジメントしていこう、ということがメッセージとして打ち出されたわけです。
例えば、自分の考えを自分の言葉で伝えられる力、論理的に情報を整理できる力、失敗を学びにつなげられる力…など、育みたい力をより明確に具体的に設定し、そこに向けて探究的な学び方に変えていきながら、各活動を連携させた計画を立てていくことが求められているということになります。
そして、今回の教育改革は、シンプルな言い方をするならば、「学び方改革」であり、「教え方改革」であると言えるかと思います。
②探究活動をプチ実践してみる
さて、ここまで探究活動を行う意義をお伝えしてきましたが、とはいえ実際にやってみない限り、探究活動って何?という気持ちがぬぐえないのでは…。ということで、今回は実際に生徒が取り組む可能性のあるお題を先生方にも取り組んでもらうことにしました。
アイデア提案型の探究活動に取り組みたいという意向があったこと、及び、修学旅行で台湾に行かれているということを伺っていましたので、以下のお題をみんなで取り組むことにしました。
Mission:山形に台湾人を呼び込むためのツアーを提案せよ。
初めに、4人グループを作り、日本、及び山形のインバウンド事情について、軽くおさらいをしていきます。

そして、グループごとに、どのようなお客様にツアープランを提案したいか明確にするため、以下の中からターゲットを選んでもらいました。
・日本が初めて、文化歴史に興味あり ファミリー
・自然、アウトドア大好き カップル
・ローカルテイスト大好きグルメなリピーター
まずは、先生方で山形についての魅力をどんどんブレストしていってもらいます。
それぞれ思いつくアイデアを付せんに書き出してもらいました。
ユニークなアイデア、視点もたくさん。先生同士でも、お互いの発想の豊かさに刺激を受けたようです。

続いて、提案するお客様をイメージしながら、他のチームのブレスト結果を見て回り、アイデアの視点をどんどん増やして行きました。
さて、ここからチームの中で、ツアー企画に落とし込んでいきます。
各チーム、笑いを交えながら、時にはうんうん唸りながら、和やかな雰囲気でツアー企画への落とし込みを行っていきました。
最後、みんなの前で発表です。
へーなるほどね、という反応もあれば、笑いもあり…、終始、先生方が笑顔で楽しそうだったことが印象的でした。

さて発表が終わったら、ふり返りです。
今回体験した活動を、改めて探究のプロセスに当てはめて、流れを確認しました。

と同時に、大切なのは、その活動から何が学べたか、という視点でふり返ること。
ついつい、実施したことに満足してしまうケースがありますが、それでは本末転倒で、必ず何の力を育てるためにこの活動をやっているのか、目的意識をもって取り組み、ふり返りまでつなげることが大切であることを伝えました。
③生徒との関わり方で押さえておきたいポイントを知る
さて、探究活動の流れを軽く体感して、イメージがわいたら、あとは、いざ自分自身が生徒といっしょに探究活動を進めていくにあたって、どのようなことを意識すればよいかについても、押さえておきたいものです。
ここで、生徒との関わり方で押さえておきたいポイントについても、ご説明をしました。
詳細は、記事「探究における生徒との関わり方とは」をご覧ください。
教員研修を終えて…
教員研修後、担当の先生がアンケートをとってくださいました。
おかげさまで、満足度100%!
終わった後も、「今日は本当にどうもありがとうございました!探究に対するハードルが下がりましたし、なんだかできそうな気がしましたし、何より楽しかったです。
みんなこの研修受けられて、本当によかったって思ってると思いますよ」
と満面の笑顔で声をかけて下さった先生。
アンケートのコメントにもこんな言葉がずらり。
・探究の目的、進め方を教員間で共有することができた。「思っているよりもハードルが
低い」と思わせてくださったので、来年度誰もが取り掛かりやすくなったと思う。
・実際に活動してみて、探究の意義や目的が理解できました。
・わかりやすい、丁寧な説明で、楽しんで研修を受けられた
・具体的に何をすべきかがわかり、探究に対する不安が減りました。
・探究の授業に関して、そして、生徒との関わり方が、イメージできました。
山形まで来たかいありました~~~!!
先生方のお声と笑顔が何よりのご褒美です。
ということで、探究に関する教員研修を実施したい、というご希望をお持ちの先生方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。
ぜひお力になれればと思います。
いっしょに探究活動を盛り上げていきましょう!!