
- 探究教材を作った背景
2022年から導入される高等学校の次期学習指導要領。
その大きなテーマとして「探究」が掲げられています。
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「探究」は背景や意図、その実践事例等を知れば知るほどその考え方は素晴らしいと感じます。
しかし、先生方が理解することや実行することに「今の延長では困難が大きい」と2017年から問題意識を持っておりました。
国の子どもたちを直接支えるのは先生方であるからこそ、全国の先生方が迷いなく自信を持って生徒たちに探究活動を行えるようにしたい。
私たちはそう考え、この国の教育を支える団体の一つとして「教材」を作ることに挑戦することにしました。
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2019年3月、2年間の開発期間を経て「実践の手引き<基礎編>」と「思考の手引き」の2冊がようやく完成しました。
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同4月、本教材の監修を行ってくださった田村先生から『探究という言葉自体は広まったものの、これが本物の探究になるのか、それとも受験や評価のため・あるいは手段のための学びなどになってしまうか、大きな分岐にいる』という話を受けました。
誇れる未来にするのか、それとも違う未来を招いてしまうか。
10年、30年先に生徒たちが自由に輝けるよう・探究が素晴らしいものになるように、私たちも現代の教育の仕組みを作る大人として、これからも活動をしていきます。

- 383名の先生方の声
2018年度、制作中の教材サンプルにご興味頂いた先生方にお話を伺いました。
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紙幅も限られているのでポイントだけ申し上げると、総合的な探究について5-10%程度の学校では十分な取り組みが行われているものの、その他大多数は関連情報やヒントを集めることに腐心しておられ、その情報源が不足していることに頭を悩ませている、という状況でした。
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お話として多かったものは、以下のようなものです。
「まだまだ手探りで参考となる情報が欲しい」
「何をもって探究といえるのか」
「どこまでやったら探究なのか」
「総合的な学習の時間でやっていたことはどうすればいいのか」
「なかなか探究というところまでいっていない」
「足並みをそろえるのが難しいと感じていた」
「テーマの設定が難しい」
「教員間で共通理解できるテキストのようなものが欲しい」
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ほとんどの方が大小さまざまな課題を抱えられていることを、強く感じました。この先生方の力になりたい。そう私たちは考えます。

- 教材制作の考え方
本教材の特徴は「段階的学習」です。
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探究活動に取り組んでいる先生方のお話を伺ってみると
「探究活動だから、自ら問いを立てて深く探究し論文にまとめさせたい!」
「せっかくだから、何か問題解決とかアイデア提案的なものをやろう!」
というように考えうまくいかない、というケースがやや目立ちます。
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冷静に捉えれば、これは野球に例えるならバットの振り方も知らずにいきなり甲子園で試合をしてこい、といっているようなものです。
うまくいかない原因は『段階を追って基礎作りをしないまま、いきなり試合(探究活動)をさせようとしていることだ』と私たちは考えました。
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理想は理想と片付けず、もちろん追いかける。
しかし理想を追うからこそ、理想の達成を見据えた良質な段階学習がその前には必要ではないか、ということです。
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『探究活動を行うためには、事前に積み上げるべき基礎がある。その基礎を体系立った教材で積み上げることができれば、先生方が理想とするような探究活動ができ、生徒にとってもかけがえのない機会になるのではないか。』
そのような考えから、本教材は制作されています。
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制作においては実際に使用される先生方の視点から「授業設計しやすいこと」「労力を極力かけないこと」「誰が行っても一定の結果が出ること」を重視しています。ぜひ、学校でのよりよい探究活動に向けた土台固めとして、本教材を利用していただければ幸いです。

- [監修の田村学先生より]
今回の学習指導要領の改訂は「探究モードへの変革」といえます。
「自己の在り方生き方と一体的で不可分な課題」を深く探究していくためには、「①目標を実現するにふさわしい探究課題」と「②探究課題の解決を通じて育成すべきと考える具体的な資質・能力」を定めていく必要があります。
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学校ごとに目標を設定し、このような学びを進めていくことになるため、そのアプローチについてもさまざまなものになるのですが、その中でも、これから「”探究モード”への準備を進める学校」に対して、本教材をご用意しました。
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段階を追って、探究のプロセスの流れを学べる工夫を凝らした教材が『実践の手引き』。
そして、探究のプロセスのうち「整理・分析」の質を高める思考スキルに着目し、複雑な問題状況における事実や関係を構造的・多角的に把握し、自分の考えを形成する方法の一例を教材化したものが『思考の手引き』です。
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皆様の学校での、より質の高い探究活動の実現の一助になればと願っています。
